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「え、いやいや! タクシー呼びますよ」


目黒くんがそんなこと言ってるのが聞こえる。



「いや、車置きっぱなしに出来ないですし。運転出来ますし」



嫌ならタクシーで帰っていただいてもいいですけど、なんて付け足しながら、岩本さんの横を通り過ぎて運転席を開ける。




「ねえ、ほんとに? 大丈夫? 慣れないサイズでしょ、心配なんだけど」



乗り込む腕を引かれて、問いかけられる。




「確かにこっちでは乗らないですけどね。実家帰ればこれくらい運転してるので」



なんて言い捨てて、乗り込む私。
可愛げなんて全然ない。




「俺、サポートする」



なんて言いながら助手席に乗り込んできたのは岩本さん。


なんやかんやで、深澤さんが丸め込んだのか全員が乗り込んで。



「結局乗るんかいな」



ちょっと笑いながらエンジンをかける。




「おっ、マニュアル」




最近では珍しくなったマニュアル車についつい反応したら、痛いほどの心配そうな視線。


...信用無さすぎてビビる。



しゅっぱあつ、なんて適当に声をかけて発進する。




「ねえ! 俺、ギアやるから!」


「は!? 飲酒運転なるでしょうが!」


「それでも心配だもん!」


「黙って座っててください!」



「あー! ほらギアチェンジ!」


「うるさい、やってます!」



思い出すまで徐行、なんて思ってたら横からきゃんきゃん言われて。


後ろの方たちは爆笑、爆睡してるけど。




信号2つ通り過ぎた頃には感覚も戻ってきて、スムーズに進み始めたでっかい車。


そこからは岩本さんも静かで。



「ねえ、さっきの話さ、トラウマ、なの?」



いきなり運転中に動揺してもおかしくない話をぶっ込まれた。





「...へ!?」

「別に、トラウマでは無いです。期待しなくはなりましたけど」




「期待しない...?」




「男性なんて、所詮、女性の見た目で声をかけて。適当にあしらって、面倒になれば捨てちゃうんだろうな、とか。周りがいいこだねっていう、友達ウケしやすい人を好むんだろうな、とか。そう思い始めると、私、そこには当てはまらないので」



「Aちゃん、十分に周りに自慢できる女の子だよ」



「過去を知らなければ、ですよね」



「そ、そんなの、みんな、黒歴史的なものはあるんだし」



「私は私全てを愛してくれる人と出会うまで、恋愛はしないってだけですよ」


岩本さんのせいじゃない。私の性格なんだきっと。

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作者名:なあちゃむ | 作成日時:2022年4月30日 0時

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