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「お、お待たせ、しました…」
携帯を触りながら壁にもたれて、待っていてくれた岩本さん。
睨まれたりしなかったら、イケメンって思えたのに。
なんて悪態を心の中で唱えながらも声をかける。
「ん。…え？」
顔を上げた岩本さんに目を丸くされて、どこか変だったかな、なんて不安になる。
「え？ あ、あの」
「あ、いや。やる気ある格好だなと」
「あ…、当時のレッスン着くらいしか運動向きのものがなくて」
「あ、そ」
いや、普通だと思う。
新卒女子が全員運動用にもウェアを買うわけないよね。
持っていただけ奇跡のようなもんじゃないの？
なんて思いながら、岩本さんと元来た道を辿る。
「滝沢くんが、期待して良いって言ってた。お前、そんな凄いの？」
「はぇ！？ いや、私なんて、全然です…」
何言ってくれてんだ、副社長。
お前のせいでだいぶ人生狂いかけてんのに。
何そのハードルの上げ方。やめてくれ。
脳内は随分とお喋りで、意外と緊張してないのかも、なんて思えてきた。
「あー！ おかえりやで！」
「うぉ！ ガチの格好でやんすね〜」
向井さんと佐久間さん、さくこじに迎えられてスタジオに入る。
スタジオを見渡すと、滝沢副社長もいて。
少しだけ睨んでおく。
「A、アップして。いける時声かけて」
そんな言葉を副社長に貰って。
「…アップします」
仕方なしに身体を伸ばして、運動モードに身体を持っていく。
「…あの」
「ん？ どしたの？」
ある程度のアップが終わって、一曲だけリズム感を戻すために踊りたくて、曲をかけてもらおうと深澤さんに声をかけた。
「アップおわった？」
「いえ、この曲、かけてほしくて」
「あー？ 俺、そういうの苦手だわ、ひかるー！」
「何ふっか」
「茂木ちゃんがこの曲流してほしいんだって！ お願い！」
「はあ、お前やれよ。笑」
笑いながらも何やら難しそうな配線に携帯を繋いでくれて。
「どれ流せばいいの？」
「あ、、シャッフルってところ押してくれたら大丈夫です」
「え？ あ、おう…」
びっくりした顔をしながら押してくれたみたいで、曲が流れ始めた。
流れてきたのは偶然にもSnow Manさんの曲で。
たしかにCD借りて取り込んだけど、このタイミングで流れるとは。
「まあ、いっか」
リズムを拾い始めた。
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作者名：なあちゃむ | 作成日時：2022年4月30日 0時
