みんな違って。（Hikaru.I） (ページ14)

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“村山A”なんて名前久々に聞いて、動けなくなる。

「え、小城さん？この子、茂木さんやろ？」

向井さんが戸惑ってる。

あ、岩本さんがまた怖い顔になってきてる。

「人気絶頂期、今から爆売れ間違いなしって時に辞めたアイドル。地下アイドルとしては確実にトップだった女。それがこの村山Aだよ」

小城さんが私の隠している過去をサラサラと紐解いていく。

「いつもヘラヘラしてて、スタッフからは枕だの闇営業だの、出稼ぎだの言われてたけどな。そんなことしてまで手に入れたあの地位、なんで簡単に手放したんだ？」

Snow Manさんとお仕事していく中で、1番知られたくなかった過去が他人によって明かされていく。

それと同時に、私の記憶も沸々と蘇ってくる。

『なんであの子なの』『またアイツかよ』『TOに金出させてるヒモ女』『整形で騙してる』『所詮身体』『衣装の露出で稼いでる』

これだけじゃない。

たくさんの火矢が当時の私には飛んできていた。

確かにTOのあの男性は毎回たくさんのブランド物のプレゼントをくれていたし。

筋トレによって得たスタイルを活かすための際どい衣装だって多かった。

ボイトレ通って練習した甲斐あって、少しずつソロパートも増えていた。

その反面、仲間やスタッフさんは離れていった。

1番応援して、信じてほしかった身内は信じてくれなかった。

「…なんのお話ですか。私は茂木Aです。村山なんて知りません」

「シラ切っても無駄だよ。俺、ちゃんと当時からリークしてんだから」

「村山A。いつでも会えるがコンセプトのグループや週末アイドルと謳うグループからスカウトを受けるも加入せず、地下アイドルを貫き、ある日突然仕事をボイコットし、この世界から姿を消した」

「何故だ？」

「お前ほど恵まれた、チヤホヤされるだけの存在であるアイドルが、何故逃げるようなことをした？」

どんどんと言葉で周りを固められる。

身動きなんて、出来ないほどに頭も身体も強張って動かない。

何か言わなきゃ、なんて思うほどうまく言葉は口から出なくて。

「…何が、わかるん、ですか。……知りもしない部外者が、アイドルを、努力を踏み躙ってくれるな！」

「……知りもしないやつの憶測で、文字を纏めんじゃねえよ」

口から溢れ出たのは、怒りに任せた思考のない言葉たちだった。