ヌナ。ーJISUNGー (ページ16)

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ep16 【You Side】ページ16

【A Side】

それは暑い夏の日だったと思う。

小学生のチソナは夏休みで
早い時間からうちに遊びにくるようになった。

一方お兄ちゃんは部活があり
練習が終わるとうちに来るから

部活のスケジュールによって
時間はバラバラだった。

兄「ヌナー。いるー？」

もうすぐお昼になる頃。

制服姿のお兄ちゃんがやって来た。

A「な、勝手に部屋に入ってこないでよー！」

兄「だって、部屋のドア、開いてたんだもん。」

窓とドアを開けると風通しがよくて涼しいから
よくそうしていた私。

まさかお兄ちゃんが来ると思ってなかったから
ダラダラと部屋で過ごしていたのに

いつもみたいに家に上がったお兄ちゃんは
私の姿を探して部屋までやってきた。

A「で、なに？今日の用事は。」

兄「昼飯。これから部活だから、食べさして。」

A「はぁ～？夜ご飯ならまだしも、お昼ご飯ぐらい、自分でどーにかしなさいよね！」

兄「いーじゃん、ヌナも暇してんだから。」

A「暇じゃないよっ！」

私を笑いながら
ベッドにドスン、と座るお兄ちゃん。

たまたま今日は休みだったけど
私だってケーキ屋さんで働き始めた。

韓国に来てから観光すらしてなくて
そろそろ行ってみようかなって思ってたんだけど

この兄弟がいきなりやって来て
いつもこんな風にご飯を頼むから
出掛けてられない。

隣の家の叔父さんと叔母さんは
最近家にいないことが多いらしい。

共働きで忙しいのは仕方ないけど
お兄ちゃんとチソナがお腹を空かせて
叔母さんの帰りを待ってる姿を考えただけでも
なんだか可哀想になる。

彼らは男の子だし、それに
小学校5年生と、中学1年生。

まだまだ子どもなのに
パンやデリばっかは可哀想…

そう思った私は
こうやって2人のご飯を
毎日のように作った。

A「仕方ないな、何が食べたいの？」

兄「んー…そうだなぁ…美味しいものならなんでもいい(^^)」

A「なにそれ。まずかったら食べないの？」

兄「えっ？(笑)」

A「あぁーあ、ひどいんだぁ。私の手料理なんて、恋人でも食べたことないんだよ？貴重だよ？」

兄「ぇ、ヌナ、彼氏いるの？」

なに、その驚いた真剣な顔。

A「…い、いませんけど？」

それがなにか？

お兄ちゃんは、まだ驚いた顔。

そのリアクションに
少し傷ついたような気も…しなくもない。

兄「ヌナ…」

A「！？」

お昼ご飯を作りに行こうとしていた私を
お兄ちゃんがぎゅっと、抱きしめた。