ヌナ。ーJISUNGー (ページ14)

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ep14 【You Side】ページ14

【A Side】

日本を離れて
初めてやってきた韓国。

病弱な父が亡くなって
悲しみに暮れていた私と、母。

そんな母が私に打ち明けたのは
こんな話だった。

母「母さんね、新しい場所で新しい人生を過ごしたいの。」

A「…新しい…って…？」

母「実は、お父さんと出会う前に、好きだった人がいて…」

お父さんと出会う前の
お母さんの恋人は韓国籍の人で
日本に旅行に来てる時に出会ったらしい。

遠距離恋愛を続けていたけど
彼は家族の勧めを受けてお見合いをし
婚約が半強制的に決まってしまった。

お母さんが彼を忘れられずにいた時
お父さんに出会い…

そして今に至る。

母「この間、母さん、韓国に旅行に行ったでしょ？その時にある程度物件を見て、いい場所も見つけたし…」

私の前にいくつか資料を広げて見せる。

A「……」

母「ここは治安もいいし、綺麗な場所だし…」

A「…お母さん。」

お母さんは私を見て、息を飲む顔。

母「……」

A「お父さんは？お父さんのこと、忘れたの？」

母「…っ…」

A「死んじゃったから、終わり？もういいの？」

お父さんが亡くなった時に
お母さんと2人、あれだけ泣いたのに。

お母さんは私をじっと見ると
目に涙を浮かべる。

母「…わかって、A…」

A「……」

母「母さんは…もう1人は嫌なの…(泣)」

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A「お母さん、これは？」

母「リビングに置いといて！」

結局、お母さんの要望通りに
韓国へと引っ越して来た私達。

お父さんを裏切るような気持ちもしたけど
長年お父さんを看病してきた
お母さんの気持ちを考えると
理解してあげることしかできなかった。

A「はぁ…」

韓国に来たこともないし
言葉だってわからない。

だけどこれからは
ここで暮らしていかないといけないし
仕事だって見つけないといけない。

日本に残ることもできたけど
20代そこらの私が1人で生きるのは
まだまだ難しく感じたし

それに、お母さん1人にするのが不安だった。

A「……」

…これから、どうなるんだろうな…私達…

「にゃぁーん」

庭の方で聞こえた、猫の鳴き声。

私は引っ越しの荷物を運ぶ手を止めて
その声の方へ呼び寄せられるように向かった。

「にゃぁーん」

A「可愛いね、お前。ノラなの？」

「にゃぁーん」

近づくと私の足に擦り寄ったり
ゴロゴロと喉を鳴らしたり。

少し甘えん坊のこの子が
私は、なんだか愛しく思えた。