＊Beginning... 3/Credence Side＊ ページ4
一方、クリーデンスは手元に握られた【おにぎり】を見つめ、彼女が消えていった方角をもう一度見た
ビラを配りに家を出て、通りに出る角で彼女とぶつかった
何とも小柄で、可愛らしい少女だと思った
背も低く、ツンとした鼻、自分と同じ黒髪をもった少女はこの辺りの人間ではないと言うのは一目瞭然だ
「あっ、すみません」
以外にも落ち着いていて芯の通った声で謝罪された
何か返さなくてはと思ったが、うまく言葉が出ない
どうしよう、どうしようと目線を泳がせていると、少女は心配そうに僕を見上げ、汚れている部分がないかチェックをしてくれた
どうすればいいのか分からず、僕は手に握っていたビラを抱えなおした
その瞬間、ぐぅぅ、と腹が鳴った
昨日粗相をしてしまったために、母さんから罰を受けて今日一日は何も食べてはいけないと言われていたのだ
恥ずかしくてたまらなかった
僕は顔に熱が集まるのを感じながら、どうやってここから離れようかを考えていると、彼女が言った
「君、何も食べてないの？」
くりっとした一重の双眼が僕を捉える
小さく頷くと、彼女は鞄から包みを二つ取り出して僕に渡した
何だろうと思ったが、優しい温もりがその包みから伝わってきて、何かの食べ物であることは間違いなかった
これを、どうすればいいのだろうか
困惑している僕を見て、彼女は不思議そうな顔をしたあと、この食べ物の正体と自分の鞄から僕に渡したのとは一回り小さな包みを取り出して、食べ方をレクチャーしてくれた
毒は入っていないと付け加えて美味しそうに食べる彼女を見て、僕は空腹にあらがえず、包みを開けて一口食べた
不思議な食感だ
今までこんな食べ物は食べたことがない
でも、とても美味しく優しい味だった
甘みがあって、でもしょっぱくて、空腹を訴えていた腹は見る見るうちに満たされた
それに加え、温かな紅茶まで出してくれた
なんて、なんて優しい人なのだろう
僕は今まで、こんなに優しくされたことはなかった
他人であるのに、どうしてここまで優しくできるのかが分からず、気になって彼女に聞くと
「ん〜。なんか放っておけなくて。助け合いの精神は大事でしょ？」
と言った
こういう人が聖人と呼ばれる人なんだろうと僕は思った
NEXT→
＊Beginning... 4/Credence Side＊→←＊Beginning... 2＊/序章
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 169人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「逆ハー」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
奥山乃愛(プロフ) - あと動物？たちに好かれたいです！ (2023年1月7日 19時) (
レス) id: fdc1778b4b (このIDを非表示/違反報告)
奥山乃愛(プロフ) - 初コメ失礼します！出来たら全員のキャラに愛されたいです！（恋愛的に）あと落ちは出来れば全員落ちみたいなのが見てみたいです！無理せずに頑張ってくださいね！ (2023年1月7日 19時) (レス) id: fdc1778b4b (このIDを非表示/違反報告)
檜ノ山(プロフ) - まいまいさん» まいまい様、応援ありがとございます！そう言っていただけると捗ります〜！ 気長に待っていただけると嬉しいです！ (2022年6月6日 8時) (レス) id: 49e5c7c013 (このIDを非表示/違反報告)
まいまい(プロフ) - 楽しみにしています！ゆっくりで大丈夫です！更新頑張ってください( *´꒳`*)♡ (2022年6月5日 11時) (レス) @page40 id: 2c18e857c2 (このIDを非表示/違反報告)
檜ノ山(プロフ) - まいまいさん» まいまい様、リクエスト＆感想ありがとうございます！6/1に発表致しますので、それまでお待ちくださいませ(´˘`＊) (2022年5月19日 15時) (レス) id: 49e5c7c013 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：檜ノ山 | 作成日時：2022年5月9日 2時
