異世界から"運命の人"として召喚された運命にあらがう為、塔を登ります。 (ページ9)

今日:10 hit、昨日:2 hit、合計:5,764 hit

出会いのち別れ4 ページ9

ここへ来て何日経過したかは分からない。
暗闇で日中との感覚が曖昧で日付感覚が狂っているのかもしれない。

きっとこの場所に一人でいたら今頃気が変になっていたかもしれない。

知らない場所でラヘルや夜の様な優しい人たちに会うことが出来たのは本当に運がよかった。でも、それと同時に家族はあの後どうなったんだろう、とかやはり自分だけ助かってしまったのではないかという不安が時折顔を出す。

『...会いたい...』

「...もしかして、家族に？」

独り言のつもりで呟いたが、近くで食事の支度をしていた夜に聞こえてしまっていたようだった。彼は一度支度の手を止め、一通り火や食器などを片付けた後に隣に座った。

『すみません、わざわざ支度の手を止めさせてしまって』

「そんな事無いよ、それよりAの話を聞かせてくれたら嬉しいな...さっきの"会いたい"って、誰に？」

『...夜が言った通り、家族に会いたいなって、思っていたんです。優しいお母さんと、ちょっとだらしないお父さん、素直じゃない弟に...。強盗に襲われて、私はなぜかここへ来てしまったけど家族はほかの所にいるのかな、とか...助かったのって私だけなのかなって...いろいろ考えてしまいまして』

とりとめ無くてすみません、と謝るとスッとシトリンのような夜の瞳が細められる。もしかしたら、くだらない事を言ってしまったのかもしれない。少し恥ずかしくなり、忘れてくださいと言いながら立ち上がろうとすると右手をぐっと掴まれた。

「僕はAがどんな思いをしているのか想像する事しかできない。けれど、大切な人と離れ離れになるのはどんなにつらい事か、僕にも大切な人がいるから理解はできる。僕も、君と同じ目に遭ったら、毎日不安でたまらないと思う...だからこそ、僕はいつか君が大切な人たちに会えるように、何かしてあげたいって思うんだ」

右手首をつかんでいた手がゆるゆると手の平と手の平どうしでつながれる。

私を安心させるように、最後に夜が微笑みながら「大切な人に会わせてあげたい」と言ってくれる。その事だけで、なぜか自然と救われたような気持になった。

『夜、ありがとう...私の方がきっと年上なのに慰められちゃったね...なんだかお兄さんみたい』

ふ、と笑いながら告げると夜が目を見開いてこちらを見つめる。

「それいいね...家族に会えるまでは、僕が君の兄さん？になるよ！」

『え...え！？』

夜、そもそも兄ってなんだかわかってるのかな...