出会いのち別れ2 ページ5
ラヘルに"ここが現実である"という風に言ってもらえて、本当に安心した。今まで無意識に入っていた肩の力が、ゆっくりと抜けたような気がした。
「でもねA、駅はここには無いわ。」
『そう...。どこに行けばあるか、教えてもらえますか？』
ラヘルは少し驚いた表情の後、複雑な顔をしながら駅はこの近辺には無い事を教えてくれた。塔に登ればあるかもしれない、と言われて驚いた表情をするのは私の番だった。
塔...ってあれだよね、東京〇ワーとか...スカイ〇リーとか...そう思って尋ねると、ラヘルは嫌な顔1つせず色々な頃を教えてくれた。
塔を登れば望みをかなえてもらえる事やこの世界は王政が敷かれている事、知らない名前の公用語がある事...。
「貴方は、本当に何も知らないのね...。ねぇ、どこからここに来たの？」
ラヘルから尋ねられる。
返答したいのに、声にならない。
『わか、らないんです。家族で食事をしてて、そうしたら男、強盗が入ってきて家族をめちゃくちゃにされ、て、いつの間にか、ここに...』
何とかラヘルからの質問に答えようとすると、あの出来事を思い出して涙があふれて出てきてしまう。うまく言葉を紡げずに居たら、ラヘルが隣に来てすっと肩を抱いてくれた。
人のぬくもりを感じ、涙はとめどなく溢れてくる。
知らない場所
家に帰りたい
家族にあいたい
そんな取り留めのない思考が止まらない。
「A...辛いことが会ったのね。大丈夫、私がついているよ。」
ラヘルは落ち着くまで、ずっと隣から肩を叩いてくれた。
少し時間を置いてから、感情の起伏が収まったのか徐々に視界がクリアになってきた。私、恥ずかしいな...出会ったばかりの女の子の前でこんなに号泣しちゃって...。そう思いながら顔を上げると、目の前に夜が居た。
「ラヘルの言う通り、大丈夫だよA。僕は、君がどこからきて何を求めているのか2人の話を聞いても分からなかったけど...でも僕もラヘルも、君を1人にして置いて行ったりしないよ。一緒にいるから。」
目をしっかりと見ながら夜が語り掛けてくれた。
どこかわからない、言葉も違う、世界観も異なる不思議な場所で、この時私は初めて居場所を得たような感覚になった。
「...まずはその服をどうにかしなくちゃね！いきましょう、二人とも」
先ほどの言葉を体現するかのように、ラヘルがぎゅっと手を握って立たせてくれた。
『ありがとう、ございます。ラヘル、夜...。』
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作者名：ちゃみっする | 作成日時：2021年11月26日 20時
