花笑みの君へ

第十九話 ページ21

・・・まるで髭切さんが折れたような言い方をする。





まさか記憶が・・・？






膝「お前が兄者を折った。お前が、兄者を・・・っ兄者を・・・っ！！」






段々ヒステリックになりだした膝丸さんに収集をつけるため、落ち着かせる。






「お、落ち着いてください。あの、何か記憶違いされてませんか？髭切さんなら今はもう無傷で・・・」






膝「髭切・・・？違う、兄者だ！！」






・・・どういうことだ、兄という概念だけが残ってそれ以外のことを忘れている・・・？






膝「兄者はお前に折られたんだ！兄者は・・・っ・・・兄者・・・？」





すると突然、膝丸さんが混乱しだす。





訳がわからないというように顔を顰め、頭痛がひどいのか頭を押さえ込んでいる。





うぅ、と苦しげに呻き声を上げて、何かを必死に思い出そうとしている。






おそらく、兄という大切な人がいたことは覚えているのだろう。






しかし精神的なショックのせいで記憶が捏造され、改変されようとしているのだ。





・・・なるほど、確かにこれは闇堕ちに近いものがある。





・・・なんて苦しげなんだろうか。





この苦痛の果てが、歴史修正主義者なのか・・・？





ドックン、と心臓が鷲掴みにされた気がする。





・・・ダメだ、闇堕ちなんかしちゃダメだ。





闇堕ちして歴史修正主義者になれば、思い出も何もかもなくなる。






心の中で泣き叫びながら、その刀を振り乱し、どこの誰とも知らない刀剣になんの思い入れもなく破壊される。





報われることも、解放されることもない。





そんなのあまりにも惨すぎる。





・・・ただ、守りたかっただけなのに。





・・・そんな胸糞悪いこと、絶対に僕は嫌だ。





思いやられた悲惨な終焉に、僕の体は勝手に動いていた。

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