第九話 ページ11
三日月サイド
ゾロゾロと皆が出て行った後の大広間に、まだ動く気になれずにいた俺は、一人で長座に座ったままだった
なんとなしに自分の手元へ目を向ければ、さっきのことが思い出される。
青年の首を切ろうとした、あの手が。
・・・最初は、本当に何を言っているんだと思った。
憎しみしかない自分には、その正しさが分からなかった。
しかし、青年の言葉でハッとした。
＿＿＿＿＿＿＿＿憎しみからは、何も生まれないと。
・・・とても、静かな声だった。
それは、もうどうしようもないことだと言うような。
まるでこの世に愛想がついたように諦めた顔が、切なくて、綺麗で。
・・・とても、遣る瀬無い気持ちになった。
そして思い出したのだ。
人間がどうしようもない生き物だということも、そんな人間を見てきたことも。
人間は弱くて、脆くて、欲深くて、浅はかだった。
ただお互いが幸せになりたかっただけなのに、互いを傷つけ合ってしまう。
相手から奪い取ったもの、奪われたもの。
その中でしか、報われない。
そうやって憎み合った末には、何もない。
ただ苦しみだけが残るのだ。
・・・それを知っていたはずなのに。
自分の掌を見れば、切り傷が数個ある。
・・・人の身を得てしまったから、こんなにも人間臭くなったのだろうか。
前任を殺した時、憎しみで一杯だった。
まるで、人間が人を殺す時のように。
けれど、残りはどうだったろうか。
憎む理由などなかったのに。
この苦しみを、味合わせたかった。苦しめばいいと思った。
俺はいつしか、自分を憐れむようになっていたのだ。
・・・なんて愚かな。
グ、と掌を握りしめばジワリと痛みが広がる。
そしてまた思い出すのは、青年の遣る瀬無さそうな顔だった。
どうしてあんな顔をしたんだろうか。
憎しみに塗れた俺の顔を見て、どこか遠い目をして、俺の中に誰かの面影を見た。
一体誰を思い出したのだろうか。
青年の中の記憶人も、俺のように誰かを憎んだのだろうか。
何も・・・分からないな。
ふと息をつけば、ここはこんなに寒かったんだろうかと思う。
お前の側は、暖かかったのに
・・・なぁ、青年。お前は俺を・・・救ってくれるのか・・・？
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そら 。(プロフ) - 続きが気になります！更新頑張ってください！ (2019年2月14日 18時) (
レス) id: a9f1236a4e (このIDを非表示/違反報告)
猫かぶり少女(プロフ) - これは……ヤバいですね( ・`д・´)続きがすごい気になります。更新遅くても全然いいので楽しみに待ってますね!応援してます! (2019年2月3日 21時) (レス) id: e93bca515e (このIDを非表示/違反報告)
槝 - 更新がない…絶望した。 (2019年1月23日 13時) (携帯から) (レス) id: 46e1741f78 (このIDを非表示/違反報告)
月夜桜 - 続きが読みたいです。お願いします! (2018年8月1日 12時) (レス) id: d530b8b740 (このIDを非表示/違反報告)
槝 - 続きが読みたいなと思いました。 (2018年7月7日 22時) (携帯から) (レス) id: 46e1741f78 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ナトル | 作成日時：2018年2月25日 0時
