story.82 ページ46
バッと鋭児郎の方を向いて、何とか視線を逸らすことなくそう言うと、鋭児郎は吹き出して笑い始めた。
こ、この野郎…私は勇気振り絞って結構真剣に話したつもりだったのに、何に対して笑ってるの…。
思ったことを上手く伝えられなくて、能天気な鋭児郎にだんだんとムカついてきていると、鋭児郎は笑いながら言ってきた。
｢そうか、そうだな。｣
｢そうだよ…私は気が気じゃないよ。でも最高のヒーローになってね、誰よりも応援してる。｣
｢ありがとな…俺はAのそういう真っ直ぐな所も好きだ。｣
｢……え、は？｣
不意打ちの言葉に硬直し、思わず視線を逸らした。近距離でいることにじわじわと緊張し始めた為、鋭児郎と距離を取ろうとする。でも繋がれた手はビクともしなくて、全く離してくれそうにない。
これが男と女の力の差ってやつなのかな…昔は鋭児郎の手を振りほどくのなんて簡単だったのに。
一体いつの話をしてるんだ、って言われそうなことを思い浮かべながら、今の鋭児郎に視線を向けた。私が必死になっているにも関わらず、鋭児郎はどこか楽しそうだった。
｢そんなに俺と手を繋ぐのが嫌なのか？｣
｢そういうわけじゃないってば。｣
｢…そうだろうなって思ってて聞いた。｣
｢…何なの鋭児郎…知ってるなら聞かなくて良くない？｣
｢聞きたくなるんだよ、Aだから、知りたくなるんだ。｣
｢ちょっ…！？｣
手を繋いだまま引っ張られたせいで、とっていた距離が一気に縮まった。
普段とは違う真剣なその顔に、思わずときめいた。
…なんでときめくの私、相手は鋭児郎なのに、鋭児郎の顔なんて今まで散々見てきたはずなのに。
でも、子供の頃とは違うから、多分こんなこと思うんだろうね。ずっとこの先も一緒にいれたらって、本気で思うんだよ。
鋭児郎の顔が近づいてきた、その時。
｢あ"。｣
｢…え、｣
｢なんだ？｣
｢お前ら…寮の近くじゃなくて、せめてどっちかの部屋に入れよ…｣
鋭児郎の背後に立っていた瀬呂くんと目が合った。
私が驚いた顔をしたから鋭児郎も不思議に思ったのか、瀬呂くんの方へと振り返った。
気まずそうな顔をした後、パッとお互い距離を取る。
最悪、なんでこうなるの、なんでこのタイミングなの。恥ずかしい無理、泣きたい、穴があったら入りたい…。
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アヤゴン(プロフ) - とてもおもしろい作品でした！切島くんに彼女がいたらこんな感じなんだろうな~っていうイメージがぴったりでした！キュンキュンしました。是非また名取さんの切島くん小説が読みたいです。 (2018年10月3日 16時) (
レス) id: ad1b6027dd (このIDを非表示/違反報告)
名取(プロフ) - ミルクさん» 信遅れてすみません、二人の、慣れていないが故に思うようにいかない初心者のような恋愛を書いていきたいと思っていたので、そう言っていただけて嬉しいです。本当ですか…私の他の作品が少しでもミルクさんの暇潰しにでもなれば幸いです。応援ありがとうございます！ (2018年6月10日 13時) (レス) id: 100ff026ee (このIDを非表示/違反報告)
ミルク(プロフ) - はじめまして！コメント失礼いたします。完結おめでとうございます！夢主さんが切島君の言葉や態度に一喜一憂する場面、逆に切島君が夢主さんの態度に一喜一憂するなど読んでいて本当に面白かったです！次の作品も読ませていただきます！これからも頑張ってください！ (2018年6月6日 20時) (レス) id: a44e70b828 (このIDを非表示/違反報告)
名取(プロフ) - パパラチアさん» なんというか、もう本当にうれしいです...作品のことを好きでいてくれるのは私もこの上なく嬉しいですし、何より書いてよかったと心から思えます。次回作も楽しんでもらえるようにコツコツ書いていきますね、コメントありがとうございます！ (2018年6月6日 20時) (レス) id: 535f9be42a (このIDを非表示/違反報告)
名取(プロフ) - Kasumi17さん» 楽しんでいただけたようで私も嬉しい限りです、今作だけに限らず他の作品まで見てくださってありがとうございます。「なぁ、先生。」のほうでも楽しんでいただけるように更新頑張りますね、ありがとうございます..！ (2018年6月6日 19時) (レス) id: 535f9be42a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：名取 | 作成日時：2018年5月21日 1時
