好きじゃない (黄) (ページ23)

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体温計ページ23

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亮side

Aの部屋を出てリビングの救急箱の中を漁る。

朝、Aを抱き枕代わりに寝とったら
めっちゃ温いなーって感じて

人間やからそれで当然っちゃ当然なんやけど
なんかちゃう気がして

Aの顔見たら目がトロンとしてて
心なしか顔がほんのり赤い。

本人は気づかないふりをしてるのか、気づいていないのか

母ちゃんがちょうど仕事に行くところで
ついでに軽く状況を説明する。

亮「あいつ今日熱あるわ」

母「そうなの？Aが体調崩すなんて珍しいわね、お母さん今日大事なプレゼンがあってもう行かなきゃだからあの子のことお願いしていい？」

亮「おん、いってらっしゃい」

母「くれぐれも変なこと……あなたのこと信用してるからね」

慌ただしく出て行った。

亮「妹になんもせえへんよ」

体温計を片手にAの部屋に戻ると

スクールバッグを膝に乗せて教科書を詰めているA。

残念やけど今日は学校行かれへんな。

『亮、具合でも悪いの？』

亮「え？熱測らなあかんの俺じゃないで？」

沈黙を破ったのはAで

キョトンとしたまま俺を見上げるAに
体温計を差し出す。

『え？何、私？』

この感じだとほんまに自覚症状ゼロやな。

状況があんまし理解できてへんみたいやけど
体温計に手が伸びてきたから
ボタンを押してすぐ測れるようにしてAに渡す。

ﾋﾟﾋﾟﾋﾟﾋﾟｯﾋﾟﾋﾟﾋﾟﾋﾟｯ

すぐに電子音が鳴って

『36.5』

髪の毛を耳にかけながら小さい声で言うA。

昔から変わらない嘘をつく時の癖。

亮「…で、ほんまはなんぼやったん？」

『だから熱ないって、そろそろ支度しなきゃ亮も私も遅刻だよ』

亮「もー、嘘ついたってしゃあないやろ』

このままじゃ埒があかへんからAから無理矢理体温計を奪い取って
ディスプレイに表示された数字を読み取る。

亮「…37.6。まあ微熱くらいやけど、昨日のこともあるし今日は学校お休みしような」

『…うん、そうする』

案外素直にクビを縦に振ったAに若干驚きつつ
俺も朝練があるから慌てて家を出た。