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37話 ページ37

os.side

「……いや、だ、」

とても小さく、弱々しく。
だけど確かに、その言葉は口にされた。

その言葉がグルッペンに聞こえたかは分からない。だけど、グルッペンのその容赦の無い言葉は、確かに彼女の耳に入ってしまった。


「先程A嬢とレイカ嬢を襲った観光客が、A嬢、貴方を狙っての犯行だと吐いた」

後から駆けつけ、まだその話を聞いていなかったショッピくん、たまたま居合わせた他の3人が驚く間もなく、グルッペンは淡々と話を進めていく。


彼女は呆然とそこに立っていた。体調が悪いとか、そういう問題じゃない。彼の言葉を本当に理解出来ていないような、それでいて全てを悟ったような表情。

扉付近にひかえているルイと言うメイドは、ただ悔しそうに唇を噛んでいた。


「そして、同じように、フレドール家にも刺客が行っていたらしい。ご夫妻は、抵抗する間もなく……」
「グルちゃん」

重々しい雰囲気が流れる中、グルッペンだけが普通だった。それでも、話さなくてはいけないことだと言うことはわかっていた。

だけど。
トントンですら、表情を歪めている。ショッピやチーノに至っては理解が出来ないと言った表情。
何故、どうしてグルッペンがこんな話を淡々と出来るのかはわからない。


グルッペンの言葉を、大先生が遮る。自分のことではない、だけど大先生の顔は悲痛に満ちていた。


「グルちゃん、やめぇや」

鬱の言葉に、その視線の先に、自然とその場の全員の視線が集まった。


その視線の先に立っているAさんは、ぼろぼろと、大粒の涙を流している。表情は、何も無い。何も無いけれど、止まることを忘れたように、溢れるその涙が彼女の心情を表している。






「……と、ご…し……」

そんな彼女の様子に、グルッペンまでもが押し黙った。そんな、静まり返った総統室の中。

ぽつりと、溢れる涙はそのままにして、彼女が呟いた。
何と言ったかはわからなかった。だけど、確かに。
確かに彼女は、視線を向けた。



憎い。
憎くて、憎くて仕方がないと言う、
視線を。

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秋人(プロフ) - パスワード掛けても公開して下さってありがとう御座います。本当に好きなお話なのでうれしいです。作者様に無理のないように過ごして下さい。 (2022年3月12日 23時) (レス) id: 3a6567d6ac (このIDを非表示/違反報告)
よにん - 前に見かけてまた見たいと思っていてまた見れて嬉しいです。応援してます! (2020年6月24日 15時) (レス) id: 3491a11aac (このIDを非表示/違反報告)
鬼雷 - 初コメ失礼します!少し前に見つけてひっそりと応援しておりました!ストーリーが凄く好きで先が凄く気になります!作者様のペースで頑張ってください!更新されるのを楽しみにしてます!完結まで追いかけます!頑張ってください! (2020年6月24日 0時) (レス) id: 15f01a3427 (このIDを非表示/違反報告)
りんご飴(プロフ) - 茄子さん» 教えてくださりありがとうございます!!これからも頑張ってください!!他はもう素敵な話ばかりで読み入ります!もしもあったら聞かせてもらいます…! (2020年6月17日 19時) (レス) id: c59a6d75f0 (このIDを非表示/違反報告)
茄子(プロフ) - りんご飴さん» コメントありがとうございます!ありがとうございます!泣きます(;;) 手首を掴んだのはsypさんです!いえいえ、分かりづらかったかもしれません……。ごめんなさい(;;) 分からないところがあればジャンジャン聞いちゃってください!ありがとうございました(^_^) (2020年6月16日 20時) (レス) id: 8809630e87 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:茄子 | 作成日時:2020年4月6日 21時

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