25話 ページ25
Aside
「私は、」
「あ……」
エーミールが何かを言いかけたのと同時にガチャリと食堂の扉が開き、誰かが気の抜けたような声を漏らした。
自然と視線がいってしまうのは仕方の無いことで。
見なければ良かった、そう思うには遅すぎた。
「すみません、遅くなりまし……た、」
食堂へ入ってきたのはショッピとレイカ。彼等が2人で食堂へ入ってくることは当然分かっては居たけど、彼等との初めての食事が楽しくて、忘れてしまっていた。
彼は対して悪びれた様子もなく、入ってくるなり大きく目を見開いた。
きっと、私が居るなんて思ってもいなかったから。断れば良かった、なんて今更思ったってもう遅い。
さっきまでの楽しかった空気が、一気に重くなった。
ああ、ごめんなさい。せっかく、楽しかったのに。
私の周りに集まっていない幹部たちからすれば、とんだとばっちり。1日も何度もこんな修羅場のような現場に立ち会わせて、申し訳ないどころではない。
なんで、どうして。
こわい。
もう、やだ。
「ショッピ、くん」
泣いたのか、目元が赤くなっているレイカが甘えたような声で彼の名前を呼んだ。
思わずびくりと、大きく肩が揺れた。
ツカツカと、扉の前に彼女を置き去りにしたまま、彼が近づいてくる。
一歩、一歩近づいて、
「……なんで、居るんすか」
私の目の前で足を止めた彼は、顔を歪めてそう言い放った。
は、と。思わず、乾いた笑いが零れた。隣に座っているエーミールが、小さく震えた声を漏らした。
ほとんど部外者のようなもの、そんな彼女がここで、彼と一緒に食事をとることは許されるのに、婚約者である私はここで食事をとることも許されないと言うのか。
そんなの、おかしいじゃん。
おかしい、よ、ね?
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秋人(プロフ) - パスワード掛けても公開して下さってありがとう御座います。本当に好きなお話なのでうれしいです。作者様に無理のないように過ごして下さい。 (2022年3月12日 23時) (レス) id: 3a6567d6ac (このIDを非表示/違反報告)
よにん - 前に見かけてまた見たいと思っていてまた見れて嬉しいです。応援してます! (2020年6月24日 15時) (レス) id: 3491a11aac (このIDを非表示/違反報告)
鬼雷 - 初コメ失礼します!少し前に見つけてひっそりと応援しておりました!ストーリーが凄く好きで先が凄く気になります!作者様のペースで頑張ってください!更新されるのを楽しみにしてます!完結まで追いかけます!頑張ってください! (2020年6月24日 0時) (レス) id: 15f01a3427 (このIDを非表示/違反報告)
りんご飴(プロフ) - 茄子さん» 教えてくださりありがとうございます!!これからも頑張ってください!!他はもう素敵な話ばかりで読み入ります!もしもあったら聞かせてもらいます…! (2020年6月17日 19時) (レス) id: c59a6d75f0 (このIDを非表示/違反報告)
茄子(プロフ) - りんご飴さん» コメントありがとうございます!ありがとうございます!泣きます(;;) 手首を掴んだのはsypさんです!いえいえ、分かりづらかったかもしれません……。ごめんなさい(;;) 分からないところがあればジャンジャン聞いちゃってください!ありがとうございました(^_^) (2020年6月16日 20時) (レス) id: 8809630e87 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:茄子 | 作成日時:2020年4月6日 21時