こんな婚約者は願い下げです！【syp】

23話 ページ23

Aside

「Aさん、これも美味しいですよ！」

そう言って、横に座るエーミールを押し退けてあーんを試みようとするチーノ。

「Aちゃん、これ俺が作ったんだ。食べてみて？」

私の前に座ってニコニコとあれは自分が採った野菜だ、これは自分が作ったと次々にご飯を勧めるひとらんらん。

「そんだけしか食わへんの！？これやるからもっと食べ！」

私の皿にご飯を盛り続けるゾム。



「え、や、あの……」

ハッキリ言おう。こんなに食べられません。

どうしてこうなったのか、何故か勝手に夕食をとることを了承してしまったルイはいつの間にか食堂を出ていた。
長い食卓の一角、流石に最初から真ん中は緊張するだろうと言うことで端に座らせて貰ったのはいいものの、前から、横から、その更に横から次々に話題を振られ、ご飯を与えられる。

動物の世話をしているような、歳の離れた妹を可愛がる兄のような皆さんの扱いに困惑してしまう。
今までエーミール以外とは、関わりはまるでなかったと言うのに急にどうしてしまったのか。
ゾムに至っては、私のせいでインナー姿なので申し訳ないし、体のラインがぴっちりと見えてしまっているためとても目のやり場にも困る。


普段、食事中は騒がしいと聞くけれど、私が居るせいなのか、私たちが座る一角を除くと静かで、チラチラと刺さる他の幹部たちの視線が刺さって痛い。
興味、嫌悪、心做しか嫉妬のような視線も感じる。

いや、そりゃあ私だって、私なんかが1部と言えど幹部の皆さんに囲まれて、畏れ多いし、申し訳ない。
だけど、凄く楽しくて。
今は、今だけは嫌なことを全て忘れられそうな気がした、から。



「……ﾁｯ」


……どうやら、そんなことなかったようで。

何処からか、舌打ちのようなものが聞こえる。思わず大きく肩を揺らしてしまった。周りの4人はまだ騒いでいて、気づいているのか、気づいていないのか。


やっぱり、心は休まらないみたいだ。

24話→←22話

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す