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22話 ページ22

ht.side

「え、と……」

ぽたり、ぽたりと彼女の髪を、肌を雫が伝って落ちていく。
こちらへ振り返った彼女はニコリと不器用な笑顔を浮かべていたが、直ぐに困惑したように瞳を白黒とさせた。

寒いだろうか。足止めをしてしまったら可哀想だ。だけど今ここを出たら、確実に出くわしてしまう。
さっきここを出て行った2人に。

迷惑かな、余計なお世話かな。

それでも、どうしてだろうか。彼女を気にせずには居られない。


「だめ、かな?」


ずっと気になっていた。気付けば目で追っていた。
自分と同じ、黒い瞳に艶々と輝く黒い髪。何処か懐かしさを感じる、見た目、仕草、価値観。
だから、関わった事なんてなかったが、それでも知っていた。彼女が、こう言ってしまえば断れないという事を。


ずるいかな、ずるいかも。
関わったことないくせになんだ、とか思うかも。
だけどごめんね、どうしても。どうしても君に見て欲しくないんだ。あんな姿、見たくないんだ。



「申し訳ありませんひとらんらん様。お嬢様は、お誘いは大変喜んでいると思いますがお召換えを……」

断れない、どうしよう。そんな気持ちを前面に出してあ、え、と言葉にならない声を出している彼女の代わりに、先程の一悶着で何回か声を出していたメイドがやんわりと断りを入れてくる。


「んー、そうか」

諦めたか、とあからさまな表情をするメイドに苦笑しつつ、ぱさり、と彼女の小さな頭を優しく包むように常備しているタオルをかける。え、と驚いて目を見開いた彼女にニコリと笑いかけた。
…と同時に、横から自分ではない手が割って入ってくる。


「これでどうや?」
「ぞ、ゾム様…?」

割って入ってきたのはゾム。彼はトレードマークである緑色のクリーパー柄のパーカーを脱ぎ、彼女の濡れた肩にかけた。
パーカーを脱いだゾムは上半身がぴっちりと体のラインが見えるインナーだけになる。普段ならご令嬢の前ではしたない格好をするなと注意するところだが、今回は別。

タオルで濡れた髪や肌を吹いても、ドレスが濡れていることには変わりはない。きっと冷たいのは何も変わっていないだろうけど、見かけだけでも。
ここを出なくていい理由があればなんだっていい。



「メイドさん、だめかな」
「……お嬢様が、良いと言うならよろしいですが…」

困ったような顔の彼女を余所に、メイドさんに目配せし、渋々と言ったように了承を得る。




「それじゃあAさん、行こっか」

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秋人(プロフ) - パスワード掛けても公開して下さってありがとう御座います。本当に好きなお話なのでうれしいです。作者様に無理のないように過ごして下さい。 (2022年3月12日 23時) (レス) id: 3a6567d6ac (このIDを非表示/違反報告)
よにん - 前に見かけてまた見たいと思っていてまた見れて嬉しいです。応援してます! (2020年6月24日 15時) (レス) id: 3491a11aac (このIDを非表示/違反報告)
鬼雷 - 初コメ失礼します!少し前に見つけてひっそりと応援しておりました!ストーリーが凄く好きで先が凄く気になります!作者様のペースで頑張ってください!更新されるのを楽しみにしてます!完結まで追いかけます!頑張ってください! (2020年6月24日 0時) (レス) id: 15f01a3427 (このIDを非表示/違反報告)
りんご飴(プロフ) - 茄子さん» 教えてくださりありがとうございます!!これからも頑張ってください!!他はもう素敵な話ばかりで読み入ります!もしもあったら聞かせてもらいます…! (2020年6月17日 19時) (レス) id: c59a6d75f0 (このIDを非表示/違反報告)
茄子(プロフ) - りんご飴さん» コメントありがとうございます!ありがとうございます!泣きます(;;) 手首を掴んだのはsypさんです!いえいえ、分かりづらかったかもしれません……。ごめんなさい(;;) 分からないところがあればジャンジャン聞いちゃってください!ありがとうございました(^_^) (2020年6月16日 20時) (レス) id: 8809630e87 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:茄子 | 作成日時:2020年4月6日 21時

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