18話 ページ18
Aside
「A嬢、どうやら我々は貴方を誤解していたようだ」
そんなグルッペンの声に、ハッと我に返る。
やはりここまで優秀な人材を集め、国民に慕われるだけあって、たった一瞬で人を惹き込ませてしまうのだから、この人は恐ろしい。
そして同時に、先程まで忘れていた緊張感、後悔の念の全てが波のように押し流れてくる。
ああ、私は幹部相手に、総統相手になんてことをしてしまったんだろう。もしかしたら、不敬罪で婚約破棄され、追放、なんてこともあるかもしれない。
もし、そうなったら。
きっと彼の、ショッピの隣に立つのは……。
そんな考えが頭に過って、直ぐに嫌になって雑念を払うように小さく頭を振る。
グルッペンの話に集中しなければ、と前を向くと、彼は私の後ろを見つめていた。
「エーミール」
「はっ、はい」
「お前は彼女をどう思う?」
声をかけられたのはエーミールで、突然名前を呼ばれたことに驚いたのか、私の後ろで大袈裟に体を揺らし返事をしたエーミールを見つめる。
急に視線が集まり、オロオロとしている彼を見て、先程まで薄らと感じていた謎の安心感の理由に気づいた。こんな事を言ったらエーミールに失礼かもしれないが、彼は、何処か自分に似ている所がある。
私がオスマンやグルッペン相手にあそこまで堂々としていられたのは、今日、助けてくれたエーミールが後ろに居たからかもしれない。
「えっ、と……。私は、彼女はその様な事を企むような方ではないと、そう思います」
つい先程までオロオロとしていたのに、直ぐに冷静な姿を見せる彼は流石幹部だ。
そう言って、私の方をチラリと見ては笑いかけてくれるエーミールは本当に優しい方だ。図書室でお茶を断ったことが今更ながらこんなにも申し訳なく思えてくる。
まさか、エーミールがそんな風に庇ってくれるとは思わなかったが、急に冷静になって頭の中がぐしゃぐしゃになっていた私にはとても有難いもので、心が熱くなった。
「……そうか。やはりな。…オスマン、どうだ。お前はどう思う?」
そこでやはり、と言えるグルッペンは何を考えているのやら。今度はオスマンに声をかける。
その一言で、ぐっと緊張感が増し、鼓動が早くなったのがわかった。
ああ、そうだ。まだこの人が居たのだ。
嫌だ、な。
「そうやな……俺は、」
「待ってください!」
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秋人(プロフ) - パスワード掛けても公開して下さってありがとう御座います。本当に好きなお話なのでうれしいです。作者様に無理のないように過ごして下さい。 (2022年3月12日 23時) (レス) id: 3a6567d6ac (このIDを非表示/違反報告)
よにん - 前に見かけてまた見たいと思っていてまた見れて嬉しいです。応援してます! (2020年6月24日 15時) (レス) id: 3491a11aac (このIDを非表示/違反報告)
鬼雷 - 初コメ失礼します!少し前に見つけてひっそりと応援しておりました!ストーリーが凄く好きで先が凄く気になります!作者様のペースで頑張ってください!更新されるのを楽しみにしてます!完結まで追いかけます!頑張ってください! (2020年6月24日 0時) (レス) id: 15f01a3427 (このIDを非表示/違反報告)
りんご飴(プロフ) - 茄子さん» 教えてくださりありがとうございます!!これからも頑張ってください!!他はもう素敵な話ばかりで読み入ります!もしもあったら聞かせてもらいます…! (2020年6月17日 19時) (レス) id: c59a6d75f0 (このIDを非表示/違反報告)
茄子(プロフ) - りんご飴さん» コメントありがとうございます!ありがとうございます!泣きます(;;) 手首を掴んだのはsypさんです!いえいえ、分かりづらかったかもしれません……。ごめんなさい(;;) 分からないところがあればジャンジャン聞いちゃってください!ありがとうございました(^_^) (2020年6月16日 20時) (レス) id: 8809630e87 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:茄子 | 作成日時:2020年4月6日 21時