第9話 ページ9
「君、明日は暇か。」
「え、暇だけど。」
「そうか、なら行きたい所があるのだが。」
アルハイゼンが家に来てから1ヶ月と少し、私は変わらず彼の作ってくれた美味しい朝食を食べて、そして、彼のリクエストの本屋にきていた。
「…これが日本の本屋。」
「本当にこんな所で良かったの…？もっと図書館とかあったけど…。」
「あぁ、あんまり遠出するつもりは無いからな。移動にも金がかかる。徒歩で行ける場所でいい。」
「お金のことを考えてくれるアルハイゼン…推せる…。」
「君の悪癖が始まったな…。」
はぁとため息をつきながらも本へ向ける視線は変わらず、その綺麗な瞳は本の背表紙をゆっくりと眺める。
アルハイゼンとポンポン会話が出来るようになってしまった為、私も自分の話したいように話すようになって、こうしてオタクな部分も隠さず彼と接するようになってしまった。
彼は呆れたような口調にはなるけれど、なんだかんだ否定したりとか嫌がったりはしないので、それに甘えてたりもする。それに、新鮮な反応だと彼も少し楽しんでる部分もあったりするし、彼がやめろって言うまでは辞めるつもりはない。
と、誰に向けてか説明していたら、彼が徐に本を手に取った。チラリと覗き込んで見ると、それは1冊の絵本だった。
「…気になるの？」
「あぁ、君の言う、日本語、英語、が同時に学べそうなものだ。挿絵もついているし、勉強には向いているだろう。」
「まぁ、そうだね。」
彼が手に持っている絵本の内容は、絵、それから平仮名、そして英語の3つの情報で出来ているもので、例えばだが、りんごの絵が描いてあるとして、そこの下にりんご、さらにその下にAppleと書いてあるような、そんな感じの絵本だ。
彼の今の知識量で絵本は何か参考になるのかなとか考えたが、きっとメインの方は英語なのだろう。平仮名や片仮名、漢字がそこそこ理解できるようになった今、英語の勉強でも始めるのだろう。
彼の言葉への熱意は凄い。彼が家で住むと決まった瞬間から、読み書きを教えてくれと強請ってきた。国語の先生でも無いし、教え方が分からなかったから、次の日の仕事帰りに漢字ドリルや五十音表を買って渡したら、彼は分かりやすく目を光らせてすぐさまそれに目を通した。
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作者名：やたお | 作成日時：2023年8月21日 0時
