家に帰ったら推しに剣を向けられたんですが (ページ7)

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第7話ページ7

「それじゃあ、行ってきます！」

「あぁ、気をつけて。行ってらっしゃい。」

彼に見送られて家を出る生活ももう1ヶ月がすぎた。アレから、せめても家事は俺がしようと、この家の料理や清掃諸々の物を担ってくれて、私の私生活の余裕がめちゃくちゃ出てきた。

毎朝美味しいご飯を食べて、疲れて帰ってきたらお風呂が沸いていて、温かいご飯が待っていた。彼が干してくれた洗濯物は太陽のいい匂いがして、布団はフカフカだった。

もう、彼がいない生活には戻れない…と思うくらいには快適過ぎて、彼にそれを伝えると満足そうにしていた。

彼との距離は、徐々に、本当に微々たるものだけど近づいている。

いつの日だったか、呼び捨て、それに硬い喋り方も要らない。君のやりやすいように話してくれ。って言ってくれて、今じゃ結構気軽に話すようになったし。

今まで私の前で寝てるのを見せなかったのに、つい先日、ベランダから射し込む日差しに微睡んでいたアルハイゼンを見た時は、今まで四六時中警戒していた猫がやっと警戒を解いてぼんやりしているのを見た時のような、嬉しい感覚が湧き上がってきて大変だった。

だが、嬉しい進捗とは裏腹に、彼の帰る手立ては本当に1ミリも見つかっていないのである。

「さて…どうしたものかな…。」

私的には彼にはいつまでもいてくれて構わな…いや寧ろいて欲しいのだが、そうは言ってられない。彼が今どこのアルハイゼンなのかは知らないが、代理賢者としての職位にいる間の彼なら、今頃教令院は絶叫が響き渡っているだろう。

それに、こっちと同じとまでは行かなくても、アルハイゼンがいない間、時が進んでいるのだとしたら、カーヴェ辺りがとんでもなく心配してそうだし、帰った時にとんでもない喧嘩が勃発したりするだろう。

スメールの為にも、彼の平穏な日常のためにも、早く帰してあげる方法を見つけなければ。

「Aさん、これもよろしく。」

「あ、はい。」

…まぁ、取り敢えず、まずは、仕事を終わらせてから考えよう。デスクに置かれた書類を手にとって、私はキーボードに指を滑らせた。