番外編1 ページ31
｢A。｣
｢わ、アルハイゼン、どうしたの？｣
｢君の戸籍を作りに行こう。｣
｢へ？｣
｢おじゃまします…。｣
｢そう縮こまるな。｣
スメールに来てから2週間くらい経った時、急にアルハイゼンから発せられた言葉に驚きながらも、腕を引かれされるがまま着いた場所はあのスラサタンナ聖所だった。
静かで、どこか威厳のある雰囲気で満ちたそこは、神があらせられるには充分すぎるぐらいの神聖に満ちた場所だった。
恐る恐るアルハイゼンの背中に張り付きながら入った先には、あの見慣れた小さな女の子、草神クラクサナリデビがそこに居た。
｢いらっしゃい。そう怖がらないで。初めまして、私はナヒーダ、貴方が別の世界から来た女の子ね。｣
｢あ、は、初めまして、A…と言います。｣
｢貴方のことをずっと待っていたの。さぁ、こちらに座って。私、貴方と仲良くなりたいの、敬語も無くていいわ。｣
｢い、いえ！そんな…！｣
｢あら、断られてしまったわ。私…悲しいわ…。｣
｢あ〜！う〜！わ、分かった！｣
ガチゴチになりながらも挨拶をすませて、ナヒーダちゃんに進められた通り席に座ると、いきなりとんでもないお願いをされて、タメ口だなんていきなりそんな不敬過ぎると一度は断るが、悲しそうな顔に完全敗北し結局はお願いを聞くことにした。
｢…それで、あの、戸籍を作るという話を聞いたんだけど。｣
｢そう、こちらの世界に来たあなたには当たり前だけれど戸籍が無いでしょう？それはこの世界で生きていくには不便だと思うわ。それに、アルハイゼンも戸籍がない不便さを熱弁してくれて、貴方に私から戸籍をプレゼントしようと思ったの。｣
｢あちらの世界で戸籍が無い不便さは痛い程思い知ったからな…それに、君はこれから一生をここで過ごすんだ。あった方が便利だろう。だから俺から提案させてもらった。｣
｢アルハイゼン…私のこと考えてそんなことしてくれてたんだ…。…えっと、でも、良いの？私なんか得体の知れない人間に…。｣
｢あら、私は貴方だから大丈夫だと思って提案したんだけれど。｣
最近はたまにあなたの様子を見に行って、貴方の人となりを調べさせてもらってたのよ。とにこやかに言われて私は背中に冷や汗が流れた。
全く気が付かなかった。一度はストーカーされた身だから、人の視線とかには敏感だと思ってたんだけど…。
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作者名：やたお | 作成日時：2023年8月21日 0時
