第3話 ページ3
「で、何から話してくれるんだ君は。」
随分と大きい態度だ。それが、目の前のアルハイゼンがアルハイゼンであるという証明になっている。私はこの状況に酷く興奮した。なんと言っても、推しが、目の前に居るのである。生きていて一生言葉を交わすことのない彼が、こうして今目の前に存在していて、あり得ないことがあり得ているのである。
私は、そんな推しの機嫌を損ねないように、彼の納得のいく言葉を返そうと、少し思案する。それから、纏めた言葉を、彼に聞かせる。
「それでは、まずはこの先の話をするにあたって大事な情報を貴方から聞きたいです。質問をしてもいいでしょうか。」
「…構わない。」
「ありがとうございます。それではまずは、貴方はスメール教令院の書記官、アルハイゼンさんで間違いないでしょうか？」
「あぁ。」
「良かった。では、貴方に説明をしたいことがあります、分かりやすくする為に、そこの鞄に入っている物を取ってもいいでしょうか？」
チラリ、と私の体の横においてある黒の革鞄に視線を向けると、彼は1つ頷いた。それを確認してから私はありがとうございます。と言葉にして鞄の中からスマホを取り出した。
鞄から出てきたスマホを彼は見詰めると、不思議そうな顔をした。
「それは？」
「これはスマートフォンって言う、そちらの世界で言うところのアーカーシャ端末のもっと細々とした機能が付いている…物ですかね。これに関してはまた後で詳しく説明します。それよりはまずこちらを見てください。」
案の定スマホに興味を示した彼に申し訳なく思いつつも、原神を開いた画面を彼に見せる。すると彼はズイっと画面を覗き込むために顔を近づけてきて、ほう。と声を漏らした。
「…俺、だろうか。」
「はい、貴方、です。」
「触っても？」
「構いません。」
彼の手にスマホを渡すと彼はジッとその画面を眺める。
『近頃はごちゃごちゃした申請が多いな、全て却下しておくとしよう。』
「俺…の声…だな…。」
暫く放置していた為、ゲームの中のアルハイゼンが喋りだして、それを聞いた彼が目を丸くする。ほんのり開いた口からはどうなっている。と当たり前の疑問を零した。
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作者名：やたお | 作成日時：2023年8月21日 0時
