第20話 ページ20
「ほんっっっっとに手がかりがない。」
「そうだな。」
アルハイゼンが家に来てから約1ヶ月半。本当に何にも進捗が無いのである。嘘だろ…。思わず頭を抱えて唸る私と、静かにコーヒーを啜るアルハイゼンの変な絵面が出来上がる。
そもそもの話、何故私がこんなに焦っていて、当の本人であるアルハイゼンがこんなに冷静なのだろうか。そうだった、超理性的な男だった、くっそ推せる…。
「うぅん…本来だったら1ヶ月半もあったら手がかりとか少しくらい見つかってるはずなんだけどな。」
「その前提情報はどこから来ているんだ。」
「創作物かなぁ。」
「信憑性が欠片もないな。」
「そもそもトリップなんてものは現実ではあり得ないんですよアルハイゼンさん…。」
「そうか、だが今こうして有り得てしまっている。」
「だから困ってるんですよアルハイゼンさん！」
アルハイゼンはテイワットに帰れなくて焦ったりしないのだろうか、不安に思ったり、普通だったらもう帰りたくてしょうがなくて泣きわめいてるところだと思うのだが。
まぁそんな逞しさも私の大好きなところではあるんだが…！！
「はぁ、それより昼食の時間だ、今日は焼肉を食べに行くんだろう。」
「そうだ！早く行かないと混んじゃう！支度してくる！！！！」
ソファから立ち上がり、コーヒーを飲み終わったカップを台所において、私が支度するのを促す。
そうだったと私も立ち上がって急いで自室に向かうと、外行きの服に着替えて玄関まで走る。
私が支度を終えて玄関に向かった頃にはもう既に支度を終えた彼が靴を履いて待っていた。
「そんなに焦らなくても今日は平日だからすぐには混んでないだろう。割引券は持ったか？前回貰っていただろう。」
「もしかしたら今日は混むかもじゃん！あっそうだ割引券！忘れてた〜！ありがとうアルハイゼン！すぐ取ってくる！」
｢転けるなよ。｣
｢ないよ〜！！！！｣
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作者名：やたお | 作成日時：2023年8月21日 0時
