家に帰ったら推しに剣を向けられたんですが (ページ16)

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第16話ページ16

「やぁ、こんばんは。今日はお菓子が食べたかったんですか？でも残念でしたね駄菓子屋さん営業時間外で。」

男だ。それに結構若い。随分と高い所から声が降りて来るから、背も高いのだろう。となると、私は抵抗しても勝て無さそうだ。

「…って、僕としたことが口を塞いでちゃ喋れないよね。ごめんね、A先輩。」

目を見開いた。拘束が少し緩まり、後ろを振り向く。そこには、思った通り、会社の後輩くんがいて、口元の拘束を解く代わりに、腕が私の腰に回されて逃げられないようにされる。

空いてるもう片方の手にはナイフが握られており、つつ、とナイフで私の喉を撫でた。

「………後輩くん、していい事と悪いことの区別、付かない感じ？」

「そんなまさか！これはしちゃいけないことだって、分かってますよ。」

「なら何でしてるの。」

「先輩が最近構ってくれないからじゃないですか！」

むっと、頬を膨らませる後輩は、この雰囲気に全くもって似合っておらず、ゾッとする。

「…そんなこと。」

「そんなことありますよ。だって、先輩前までは、僕が飲みに誘ったら毎回来てくれたし、昼休みも一緒に食堂に行ってくれたじゃないですか！それなのに、最近はお弁当持ってきたから自分のデスクで食べるとか、家でやりたいことあるからって断ったりとか、酷いですよ！僕のこと弄んでたんですか？」

「…弄んでたって、私は最初から君のこと後輩くんとしか思ってないけど。」

「あれ、そんな意地悪言うんですね先輩…。どうしよう、僕泣けてきて、今にも先輩のこと、刺しちゃいそうです…。」