第15話 ページ15
「スゥゥゥ……やばいな。」
どうも、私です。え、今何してるって？ははは、超早足で自宅を目指してるんですよ…。
いやね、これには訳があって、また今日も視線を感じるわけだから、後ろをなんとな〜く振り返ったんですよ、そしたらなんてこと！キラリと光る刃物が見えたでは、あ〜りませんか。
流石にやばいなと感じた私は、そそくさと早足で自宅を目指してるわけですよ。幸い最寄り駅から自宅は近くて、大した距離もないんだけど、そんなに体力はないので走って逃げ切る自信が無いのだ。
そもそも、今までずっと姿を見せて来なかったストーカーが、今日初めて姿を見せたのだ、そうそれは物騒な刃物を持って、これはだって、そういう事だろう。私痛いのは嫌なのだが。
こんな時でもくだらない冗談を考える脳ミソがあるのだから、私はとんでもない危機感のない女なのだろう。だが、もうヤバいもんはヤバいからな…しょうがないね…って言うのが今の気持ちである。
だが、私だって黙って死にたいわけじゃない、鞄に入れているスマホをそれとな〜く弄って、彼に持ってた方が何かと便利だからと押し付けたスマホに電話をかける。
4コール目くらいに、プツッと電話が繋がる音がして、どうした、と聞きなれた低音が流れてくる。
その声が聞こえた瞬間、私はスマホの裏面を短く3回叩いて、3回裏面をなぞり、そしてまた短く3回叩いた。
『…。』
スマホからは、彼の声は一切聞こえない。だが、トントンと歩く音が聞こえる。きっとこちらに来る準備をしてくれているのだろう。
「お菓子食べたくなってきた…。」
チラリと周りを見て、今自分が駄菓子屋さんの近くにいることを確認して、静かに、独り言を零したかのように、自身の現在地をそれとなく伝える。賢すぎる彼にはちゃんと伝わったようで、あそこか…。ボソリと彼の声が小さく聞こえた。ガチャンと鍵が開く音がして、次の瞬間風を切る音が聞こえる。
きっと走ってくれているのだ。これなら直ぐにアルハイゼンが到着するなと考えていたら、グイッと手を引かれて、口元が押さえつけられる。
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作者名：やたお | 作成日時：2023年8月21日 0時
