第10話 ページ10
｢は〜い、鍵空いてますどうぞ〜。｣
と言うやいなやすぐに扉が開かれてズカズカと、予想していた巨体が部屋の中へ入って来た。
そして、座って準備をしていた私を、その不思議な瞳で私を射抜くと、分かりやすく顔を歪めた。
｢研究室であろうと、一人の時は鍵を閉めろと何度も説明したはずだが。｣
｢もう！久しぶりに会ったんだから久しぶりぐらい言ったらどう！？｣
相変わらずのお小言から入って来たこの男に、分かってはいたが多少は期待していたので、ガックシと肩を落とす。まぁこの男に期待したら負けである。
｢…それで君は今から出かけるつもりだったのか。｣
｢人の話聞いてよね…。そうだけど、アルハイゼンは何か用？まぁ用があるから来たんだろうけど。｣
相変わらずの自分中心で進んでいく会話に、なんとなく安心感を抱きながら会話を進めていく。
｢いや、特に用は無い。｣
え！？と大きな声が出る。あのアルハイゼンが用もなしに私の元へ！？！？明日は空から槍が降ってくるかもしれない…。と悶々と考えていると、アルハイゼンから冷たい目を向けられる。本当にこの男は、こういう時だけ表情豊かになって…。
｢君に久しく会ってなかったから、生活も落ち着いてきたし会っておこうと思ったんだ。また暫く会えなくなるかもしれないしな。｣
｢へぇ〜…まぁ書記官にもなったら忙しいだろうね…。｣
｢いや、書記官の仕事は別に忙しくない。｣
｢え？じゃあ何が忙しいの？｣
｢…この話は良いだろう、君は昼は食べたのか。｣
アルハイゼンがあきら様に話題を変えたが、アルハイゼンが変えたということはこの話にはもう突っ込んで欲しくないと言うこと、私もアルハイゼンに嫌われるのは本意では無いので流されてあげることにする。
｢食べてないよ。｣
｢そうか、なら一緒に食べに行かないか。｣
｢喜んで、あ、でもちょっと待ってまだ準備が出来てない。｣
食事に誘われたことだし、急いで出かける準備をする。あっちこっち移動する私を静かに見てくるアルハイゼン。本読まないのだろうか。
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作者名：やたお | 作成日時：2023年2月13日 16時
