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体質56 ページ6

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相良さんが私の上半身をゆっくり起こす。


片桐さんは私の頬を手の甲で撫でた。




「ぅ、いた、ッ……」




撫でられると痛い。


私が小さく声を洩らせば、片桐さんは撫でるのを止めて、"……こりゃ、かなりひでェな、"と呟いた。



どうしよう、迷惑掛けてる。


本当は紅野くんを追いかけたいよね、ごめんなさい。


私は、力なく少しだけ震えた手で相良さんの服を握る。




「迷惑掛けて、ごめんなさ、ッげほ、ぅ、……ッ!」




咳をすれば、口の中が血の味がする。


うそ、なにこれ、気持ち悪い。


でも、そんなことじゃなくて、謝らないと。



紅野くんと再会したせいか、初めて千葉(ここ)に来たときのように臆病な性格に戻っていた。


やっぱり、私なんかが調子に乗っていいものじゃなかった。


少し褒められたからって、少し認められたからって、浮かれてた。


ごめんなさい、片桐さん、相良さん。




「……相良。」

「……おう。」




二人の表情は、怒りに染まっていた。


どうしよう、どうしてそんなに怒ってるのかが分からない。


もしかして、私のせい……?




「……お前じゃねぇ、あの東京モンに怒ってんだ。」




私の心を読んだようにそう言い、くしゃ、と頭を撫でる片桐さん。




「A、ここら辺に公園あるか。」

「え、……あ、少し、歩いたところに……」

「とりあえずその頬、冷やしに行くぞ。」




相良さんの質問に答えれば、片桐さんに腕を掴まれ立たされる。


片桐さんに"歩けるか、"と聞かれ、こくんと頷けば"そうか。"と返事が返ってきた。



二人に挟まれて歩く商店街は辛かった。


私の頬を見るなり、待ちゆく人々は相良さんのせいだの片桐さんのせいだのと言っていた。


ちがう、二人はそんな人じゃない。


そう言いたかったのに、言い返せないのが悔しかった。




「……オイ、テメェが気にすることじゃねェだろ。」




相良さんはぶっきらぼうにそう言った。


……でも、悔しいものは悔しかった。



やっぱり私は、紅野くんの言うとおり弱虫だ。


何一つ言い返せない、臆病者だ。




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y1u2i3n4a(プロフ) - めちゃくちゃ好きです本当に。更新待ってます (11月27日 18時) (レス) id: 9135bf7da8 (このIDを非表示/違反報告)
くま(プロフ) - ど、どうか、続きを………こんな面白くて文才豊かな作品久しぶりすぎて………… (2022年7月13日 17時) (レス) @page12 id: 65408d9878 (このIDを非表示/違反報告)
うへへへへ(´へωへ`*) - 続き楽しみ (2022年6月12日 20時) (レス) @page12 id: 8243bd92bd (このIDを非表示/違反報告)
葉紅(プロフ) - もう更新しないんでしょうか?すごく面白いので続きが見たいです。更新楽しみにして待っています! (2020年9月22日 22時) (レス) id: 915a610475 (このIDを非表示/違反報告)
紅華 - 面白いです!更新待ってます! (2020年9月1日 20時) (レス) id: 7b082dad3b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:なしは | 作成日時:2019年1月26日 21時

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