muguet....〈n.k〉 (ページ5)

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ガチャ

「ただいま〜…」

真っ暗な部屋

電気を付ければ、そこは今朝と全く同じ景色

お皿に乗ったままのトーストと目玉焼き。

あぁ、可哀想なパン、可哀想な卵。

そして、慣れた手つきで片付け始める私の手。

「…はぁ……」

ため息をついても誰にも聞こえない。

気づけば、

目の前に並んだ二人分の夕食。

和が、私の料理を食べたのは、

二人で一緒にテーブルを囲んだのは、

いったいいつだっただろうか

わかっているつもり。

けどね、

突然ドアが空いて

ただいまって声が聞こえるんじゃないかって

美味しいって食べてくれるんじゃないかって

期待している私は

学習しない、ただのバカで

分かってるんだよ

忙しいだけが理由じゃないって

毎日毎日夜中や朝方に帰宅するあなたに

あなたのシャツを洗う時に香る甘い香水に

いつからか

私全く求めなくなったあなたに

それでも

私が物分かりのいい彼女を演じ続けるのは

この部屋の鍵を

あなたがくれたから

きっと

どうしようもなくあなたが好きだから