ルームシェア【志麻】 (ページ28)

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志麻はビールをひと口飲んで言った。

｢ドラマのなかでは、これが運命の人に出会う最強の法則なんやけどな｣

普通ならここで話は終わるのだけれど、今日の私はなぜかここから急加速を始めた。

『でもおもしろそうだから試してみたいなあ、その生け贄の法則』

それを聞いた志麻はあからさまに驚き、飲んでいたビールを噴き出しそうになった。

｢えっ、A、そんな生け贄にできる男なんかおるんか？｣
『いるわけないじゃん』
｢なら、この法則は無理やろ｣

私は作り笑顔で志麻に優しく話しかけた。

『あの～、松永さん』
｢無理やから｣
『まだ何も言ってないでしょ』
｢Aが俺のこと松永さんって呼んで、いいことがあるわけないやろ。.....で、一応訊くけど、何？｣
『生け贄のヒツジになってくんない？』
｢無理｣
『もうそんなに嫌がらなくてもいいじゃん！志麻は、私に幸せになってほしくないの？』
｢そりゃ、なってほしいけど｣
『じゃあ、ヒツジになってくれてもいいじゃん！』
｢.........｣

志麻はこの酔っぱらいの会話の落としどころを考えているようだった。
私がどんな追い払い方で拒否するのかと思っていると、志麻の会話は私の思い描いていたルートから急に脱線した。