ルームシェア【志麻】 (ページ22)

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そんな想いで家に帰ると、いつもは私より帰りの遅い志麻がキッチンで料理をしていた。
部屋は炒めもののいいにおいであふれている。

｢おかえり、A｣

そう言う志麻に、私はわがままな声で言った。

『お風呂入るからごはん作っといて！あとビールも！』

志麻はあっけにとられ、｢お、おう｣とひと言返すだけだった。

私はさらに語気を強めて言った。

『おいしいもの作ってね！』
｢あ、はい｣

そしてそのまま足早にバスルームへと向かい、嫌なことを洗い流すようにシャワーを浴びた。

熱めのお湯を浴びながら冷静さを取り戻すなかで、私は志麻に対して強い口調で言ってしまったことを反省した。

あとで志麻に謝ろう。

そんなふうに自分に罪悪感を持たせることで、逆に、自分はちゃんと自己分析ができる人間なんだと認識し、未来へ進むための活力に変えている。
私はそんな嫌な女だ。

でもそんな気持ちも、お風呂から上がってビールを飲めばさっぱりすると確信していた。
そして、それ以上に確かなことは、志麻がさっきの私の発言に対して怒ったりせず、淡々とごはんを作っているということだった。

なぜなら私の知っている松永志麻という人は、怒ることは面倒くさいと考えるような人だからだ。

5年という年月のなかで培ったそんな確信とともに、私はバスルームを出て部屋着に着替え、リラックスした状態でキッチンに向かった。