ルームシェア【志麻】 (ページ19)

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『あの.....私の部屋、見てもいいですか？』
｢あ、ゴメン気づかんかった。部屋も見てへんのに決められんよな｣

そう言うと志麻は私を部屋へと案内してくれた。

志麻がドアを開けて現れた部屋は、私にリビングを見たとき以上の感動を与えてくれた。

部屋自体はそれほど広くなかったが、パイン材の香り漂うベッド、そのベッドと同じ素材を使った机と椅子がバランスよく配置されていて、狭さを感じさせなかった。

ステンドグラスがアクセントになっているアンティークチェストに、同じくアンティークのワードローブ、壁面棚にはヨーロッパ雑貨がケンカせずに共存していた。
そして、枠色がモスグリーンの窓から見えた向かいの空き地が、私にはイギリスの湖水地方の草原に見えた。

最初の出会いでわかった。
その先、これ以上の部屋に出会うことはないということが。
そんな確信という名の感動が、私を気持ちよく襲ってくれた。

私は男と一緒に住むことなどどうでもよくなり、はっきりと答えた。

『決めました。私、ここに住みます』
｢よかったあ｣

志麻はホッとした声を出し、そして右手を差し出した。

｢じゃあ、これからよろしくな｣

握手とはベタだなと思ったが、部屋の雰囲気に乗せられてハグされる方が困ると思った私はそれに応じ、取引は成立した。