第417話 朝から鍋って結構いけるもんです ページ7
「お、おー・・・じゃニーよ！？」
勢いに流されて思わず挨拶を返してしまったが、ドグラが聞きたかったのはそこではなかった。
「じゃあなんだよ？あ、もしかして味見かっ？」
「はぁっ！？」
呆気にとられるドグラは放置したまま、いそいそと小皿に取り分け、零さないように慎重に台から降りてドグラに手渡す。
「あっついから、きぃつけてな！」
「いや味見したかった訳じゃニーよ！？」
とはいえ味見用の小皿は受け取ってしまったし、己を見上げる少女はどこか緊張しているようにも見受けられた。
さすがの山賊でも、齢四歳にも満たない幼子の善意による純粋な行動と、期待するような視線には耐えきれなかった。
ええいままよと覚悟を決めて、小皿をあおった。
「・・・ん！？」
口に広がる肉の旨味と野菜の甘味。どこか懐かしさをも感じさせる、優しい味。
出汁は猪で取ったらしいが左程くどくはなく、どちらかといえば後味さっぱりとしている。
気になっていた野生の肉独特の臭みなど、ほとんどない。
じわりと腹の底から湧き出て来た熱は体中を駆け巡り、体の芯から温まるような感覚を覚える。
朝から食べるのにうってつけ、という言葉がぴたりと当てはまる。そんな温かな味だった。
「ど、どーだ！？」
「・・・オメー、本当にルフィの妹か・・・？」
ドグラが怪しんだのも致し方ないことだった。
ルフィは料理などからっきし。対してAのこの腕前。
血が繋がっていると言われても、そうそう信じられないだろう。
「え？あ、あたりまえだろっ！？それより、どーだった！？」
だがそんなことは、Aには関係がなかった。
今彼女の脳内を占めているのは、『美味しかったのか、そうでなかったのか』という、調理した自分以外からの味の感想だった。
「あァ、美味かった、美味かったけど二ー・・・」
「ほんとかっ！？そりゃよかった！」
にぱっと喜色を前面に押し出して笑うと、少女は再び台の上に登って鍋の様子を見始めた。
その小さな後姿を、ぼけっと放心したように眺めていたドグラ。
しかし窓から零れてきた日の光に、そろそろ起床時間だと思い出して、慌てて踵を返した。
「ふっふーん、ふっふふーん」
楽しそうに鼻歌を歌いながらアクを取る少女の元に、腹ペコ兄貴達がやってくるまで、あと3分。
少女お手製の鍋が山賊達に振舞われるまで、あと10分。
＿＿＿＿この日からAが調理当番に任命されたのも、自明の理というものだった。
第418話 150戦、つまり三で割れば丁度良い→←第416話 朝から鍋で元気百倍
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師走(プロフ) - 平野澪さん» 先日に引き続きありがとうございます……！！少し更新ペースは遅くなりますが、気長にお待ちいただけると幸いです……！！ (2022年6月8日 14時) (
レス) id: 5000983d6f (このIDを非表示/違反報告)
平野澪(プロフ) - ほんとに面白い！！ずっと応援しています！頑張ってください！ (2022年6月7日 21時) (レス) @page30 id: 46f0f08380 (このIDを非表示/違反報告)
師走(プロフ) - 平野澪さん» コメントありがとうございます！！大好きと言っていただけて、とても光栄です……！！ (2022年6月3日 7時) (レス) id: bdf3575371 (このIDを非表示/違反報告)
平野澪(プロフ) - 面白かった！！！！大好き♡ (2022年6月3日 0時) (レス) @page28 id: 46f0f08380 (このIDを非表示/違反報告)
師走(プロフ) - 団方さん» 今回も本当に長い間開けてしまい申し訳ありません……！本当にお待たせしてしまいますが、絶対に途中で失踪などはしませんし、完結させますので、よろしければ読んでいただけると幸いです……！乾燥ありがとうございます！励みになります！！ (2021年10月10日 15時) (レス) id: 5000983d6f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：やっすん | 作成日時：2018年10月26日 19時
