第358話 桜の記憶 ページ8
澄み渡るような青空の下、川のせせらぎと緩やかな風が桜の木々を揺らす以外の音のしない島で、桜見酒と洒落込んで。
「お前が死ぬって？ロジャー」
互いに三つの酒樽を空にし、四つ目の酒瓶を手に飲み始めた頃合い。
そんな折に、目の前の好敵手は、まるで明日は晴れだとでも言うような気軽さで、己の死期を語った。
「ああ、もう長くねェ。ラフテルの行き方でも教えようか、白ひげ」
「聞いても行かねェ。興味ねェからな」
けらけらと愉快そうに笑うロジャーに、白ひげは憮然と、いつも通り全く気をそそられないと言わんばかりに酒を煽った。
酔っ払った酒飲みの話というものは、得てして話題がコロコロ変わる。
それは、海賊王であったとしても変わりない。
「近頃政府の奴等が・・・おれをなんて呼んでるか知ってるか？“ゴールド・ロジャー”だ」
酒にあまり強くはない好敵手は顔を赤くしながらも、それでも酒を飲む手をやめない
「違う！！おれは！“ゴール・D・ロジャー”！！！」
酒を持っていない方の手で、憤りに任せて柔らかな芝の地面を叩く。
「時々会うな、“D”を名に持つ奴等・・・」
そんなロジャーの様子は別段珍しくはない。だが、ロジャーの名を聞いて、船に居る一人の息子が思い浮かんだ。
「ウチにも一人、ティーチって奴がいる。“D”ってのはなんなんだ・・・」
「おお、知りてェか。よし、教えてやろう。遥か昔の話だが＿＿＿」
酒が入って気分が良かったのだろうか。それとも、己の死が近いのだから話してしまおうとでも思ったのだろうか。
そんなこと、今になっても分かる筈もないが。
そんな他愛もない、酒飲み同士の雑談。思っていたよりも、覚えていたらしい。
＿＿＿＿そうだ。
「・・・お前じゃ、ねェんだ・・・・」
「ま、まだ生きてんのかよ！！」
あれだけの銃弾、刃を受けてなお言葉を発する白ひげに、黒ひげは背筋が寒くなるのを止められなかった。
凄まじい生命力。あるいは、執念とも呼べるもの。
それらに、恐怖したのだ。
「ロジャーが待ってる男は・・・少なくとも、ティーチ・・・お前じゃねェ・・・」
声帯などとうに潰れ、肺にはいくつもの穴が空いているせいで、掠れて濁った声。荒い吐息混じりの、震えた声。
だというのに、胸を圧迫するような、痛いくらいに肌に突き刺さる、威圧感。
戦場に居る誰しもが動きを止め、大きくはないが腹の底にまで響く言葉を聞いていた。
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師走(プロフ) - 愛さん» ありがとうございます！！感動していただけてほんっとうに嬉しいです！！自分もまだまだですので、更に研鑽を積みたいと思います。これからもどうぞよろしくお願い致します！ (2019年2月12日 18時) (
レス) id: 348f2a7da8 (このIDを非表示/違反報告)
愛 - 362話スゴい感動しました!マジなきしちゃいました、その文才分けてほしいです。これからも頑張ってください (2019年2月12日 18時) (レス) id: b6e30cbc23 (このIDを非表示/違反報告)
師走(プロフ) - りんご飴さん» すみませんでした！！やらかしているの確認しました！！ありがとうございます、今すぐ訂正します！！ご指摘ありがとうございます！！ (2018年9月30日 8時) (レス) id: 348f2a7da8 (このIDを非表示/違反報告)
りんご飴(プロフ) - 361のティーチの名前エドワードじゃなくてマーシャルですよ〜 (2018年9月30日 8時) (レス) id: 0242962b37 (このIDを非表示/違反報告)
師走(プロフ) - 森田菜々子さん» えっ、あっと、申し訳ありません・・・！！ケロロ軍曹はその、そんなに詳しくないのです・・・！！ミルルってどの子だっけ？というレベルですし、恋愛ものは一切書いたこともなく・・・！！本当に申し訳ありません、お断りさせていただきます・・・！！ (2018年8月17日 10時) (レス) id: 348f2a7da8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：やっすん | 作成日時：2018年7月13日 14時
