第142話 ページ8
私が満足して図鑑を閉じた時だった。
「ダメです！何をしているんですか？」
病室の扉の外から、女性の大声が聞こえた。何かあったのだろうか。ダルい体を起き上がらせて、扉を開く。
廊下の向かい側、窓の外では、病院服を着たボロボロのリーが、腕立て伏せをしていた。
左手を骨折しているのか、右腕だけで必死に体を動かしている。
「リーくん！止めなさい！！アナタはまだ動ける体じゃ…」
「少し黙っていて下さい！」
看護婦の静止も聞かず、腕立てを続けるリー。
「…199… ！！ぐぅ…」
体の限界が来たのか、リーは呻き声を上げ、その場に倒れてしまった。
「リーくん！」
「リーさん！」
どこから見ていたのか、サクラとイノがリーの元に駆け寄っていく。リーはそのまま意識を失ってしまったようだ。
「私…担架を持ってきます。見てて下さい！」
看護婦はそのまま走って去っていった。
ここからでは聞こえないが、サクラとイノはリーを見ながら何かを話している。
サクラは泣いているのか、肩が少し震えていた。リーの事が心配なのだろう。
……私は…
ギュ、と拳に力を込める。私は他人の心配なんかしない。予選の内容なんかよく知らないが、リーはきっと敵にボコボコにされたのだろう。けれど、それは弱い方が悪いんだ。弱かった自分を反省して修行を続けるのは正しい行いだ。止める資格なんか誰にも無い。
やがて担架をもった医者達がやってきて、リーが運ばれていく。サクラとイノも着いて行ったが、私には関係ない。そこまで考え、病室に戻ろうとした時だった。
「あいつ…ロック・リーだっけ？何であそこまで拘るかね」
「さぁな…。もう忍としてやってけねぇ体になっちまったんだろ？とっとと諦めれば楽なのになぁ」
そんな会話が聞こえた。
………忍として、やっていけない？
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 114人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ジェシカ | 作成日時：2023年7月9日 21時
