赤薔薇の蕾がつく頃に (ページ11)

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それから数時間がたった頃、飛貴が遊びにきた。

「Aやっほ～！今日もお店に貢献しにきたよっ！」

『はいはいそれはどうも～』

「ひどっ！Aつめた～い」なんて言う飛貴を軽くあしらいながら注文された商品を作る。

「ねえ、今日何時終わり？」

『あと1時間ちょいで終わりかな』

「じゃあ待ってていい？」

『いいの？ありがとう』

飛貴にフラペチーノを渡すと、軽い足取りで席に向かっていった。

それからバイトの時間が終わり、本を読んでいた飛貴に声をかけるとニカッと笑って「帰ろっか！」と言った。いつ見ても眩しい笑顔だ。

「なんか今日、A綺麗じゃない？」

帰り道、ふと飛貴が私を見て言った。

『え？』

「あっ、いやっ、いつも綺麗なんだけど今日は一段と綺麗に見えるって言うか…」

『…あ～、今日ちょっとした用事があって』

「……用事？男？」

『まあ、うん。』

飛貴は「そっか」と下を向いてしまった。この前彼氏と別れたばかりなのに、もう次かよとでも思われているのだろうか。

『あ、ほら前に言った熱中症になった時助けてくれた金髪の人、色々あって傘返してもらったんだ今日！』

と何故か早口でペラペラと話すと、飛貴は怪訝そうに眉をひそめた。

「…それで、なんでそんなにおしゃれしてるの？好きなの？その人のこと」

『好き？いやいやいや、ないないない。だって最初に会ったのつい最近だよ？それに、私まだ……』

と言いかけて言葉に詰まる。
私はまだ元彼のことを引きずっていたのだった。

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