赤薔薇の蕾がつく頃に (ページ2)

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少しして大分意識がはっきりしてきたことが分かったのか、彼は安心した面持ちで「じゃあ俺行きますんで、お大事にしてください」と言いカーテンを開けようと手を掛ける。

おい私、助けてもらって何もしないつもりか？！

さすがにそれはまずいけれど、今のままでは何も恩返しができない…！

『あの！』

さっきよりは呂律も回るようになったので声をかけると、彼は振り向き綺麗な顔をこちらに向け首をかしげた。

『お名前、聞いてもいいですか…？』

…って、これじゃあ理由もなくただ名前を聞く変な人じゃないか！この人だってちょっと驚いた顔してるし！

『あの、だから、助けてもらったので、お礼がしたくて…！』

と慌てて付け足すと、彼はにこりと笑った。

「お礼なんて、俺はただ当たり前のことをしただけですから」

…見た目だけじゃなく中身までイケメンだこの人…！！

…と圧倒されている場合ではない。

『いや、でも……』

「本当に大丈夫ですから」

『…お名前だけでも……！』

なかなか引かない私に彼も押しに負けたという感じで口を開いた。

「嶺亜です。中村嶺亜。」

綺麗な名前だな、と思った時には既に彼はカーテンの外で。自分の名前も言い忘れたしお礼も言い忘れてしまった…。

「なかむら、れいあさん……」

これが、私と彼の出会いだった。

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