赤薔薇の蕾がつく頃に 2 (ページ6)

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昼過ぎのシフトが終わり、美波とフラフラ歩いていると野外ステージのポスターを見つけた。

「これAが好きなアーティストの曲じゃない？」

『あ、ほんとだ』

中学の時に見つけてそれから結構好きなアーティストの有名な曲を歌うグループがあるらしい。

中村さんたちのライブの次の次か。そこのグループも見ていこうかな。

不意にその曲のフレーズを口ずさむ。

「…っ、ちょっと君！！」

『えっはい！私ですか？！』

突然知らない男の人に腕を掴まれる。

…なに、こわい……

「俺らこれからライブなんだけどボーカルの子が具合悪くなって出れなくなっちゃって…」

『は、はあ…』

「それで、今君が歌ってた曲やる予定だったんだけど…」

『…』

「お願いします！ライブ出てください！」

『え、ええっ！？』

人が沢山いる中で頭を下げられて、驚いてしまう。

「今ちょっと聞いただけでも君がめちゃくちゃ歌上手いのわかった。急にこんなこと言って本当に申し訳ないけど、お願いします！！」

『いや、でも……』

どうしよう……この人、かなり切羽詰ってるみたいだけど……けどそんなこと言われても人前で歌ったことなんて中学の音楽のテストくらいしかないし……

と思っていたら後ろからメンバーらしき男女3人が走ってきた。

「ボーカルやってくれる子、見つかった？」

「今、この子にお願いしようと思ってるんだけど…」

「っ、私たちからもお願いします！私たち今年が最後の学園祭で…」

「お願いします！！」

4人に頭を下げられてしまい、通行人にジロジロ見られている。

「あなたたち急に来てボーカルやってくださいなんて、Aに失礼じゃないですか！？Aだってそんな急に＿」

『わかりました』

「…A！」

『やります、もう時間ないですよね？ちょっとだけ練習させていただけますか？』

「いいんですか…！」

『私に出来ることなら、やらせていただきます』

「A、ほんとにやるの？！」

『うん、やるよ』

この人達だって少しでも練習時間が欲しいだろう。

私が断ったら、きっとどんどん時間はなくなってしまう。

だったら、私がやらないで誰がやるんだ。

「ありがとうございます！！」

心配そうな美波に『大丈夫だから、私にまかせて』と言って私たちは練習室に向かった。

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