赤薔薇の蕾がつく頃に 2 (ページ23)

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片付けを終え、待ち合わせ場所に向かうと既に中村さんは到着していた。

『すみません、お待たせしました』

「ううん大丈夫だよ。場所なんだけどさ、野外ステージ近くで見たい？」

『そこまで近くでなくてもいいです。近いと混んでるだろうし…』

「おっけー、じゃあちょっと遠くだけど空いてるとこ行こっか」

そして向かったのは野外ステージが見える中庭。

しかし……

「ごめん、これは完全に誤算だった……」

この場所は人が少ない。
…少なかれど人はいる。

そのほとんどがカップルだなんて……

『大丈夫です！気にしません！』

空いているベンチに腰掛けるけれど気まずい…

あそこのカップルなんて芝生の上で膝枕してるんだけど！後夜祭見る気ないでしょ！！

なんていろいろ考えていたら後夜祭が始まった。

「…Aちゃんもあのステージで歌ってたんだよね」

『あ～、ボーカルの方が具合悪くなっちゃった時に私が鼻歌歌ってたら呼び止められて…』

「それであんなに素敵な歌声で歌えるのがすごいよ」

『…実は、最初ステージに立った時ものすごく緊張してたんです。でも中村さんが私に頑張れって言ってくださったから頑張れました。ありがとうございます』

中村さんは驚いた顔をした後優しく微笑んだ。

「Aちゃん、頑張ったね」

照れくさくて正面を向くとふいにベンチの上でお互いの手が当たった。

かと思うと中村さんは私の手に自分の手を重ねてきて。

「…いやだったら、手離してくれていいから」

そんなの、離せるわけない。

ドキドキが触れている手から伝わってしまいそう。

昨日だって一応手は繋いだけど、それとは違うシチュエーションだから余計ドキドキする…

ずっとこんな幸せな時間が続けばいいのに、なんてベタなことを考えてしまう。

私は少し、いや、かなり中村さんに嵌ってしまっているのかもしれない。

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