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｢緑谷だって、そうやって俺たちからAを守って、あわよくば自分のモンにしようとしてるんだろ｣
｢そっ、そんなこと……！｣
｢今更否定しようとしても無駄だクソデク。Aに惚れてんのは秒で分かんだ、何年テメェを見てきたと思ってる｣
｢ちがっ、違うよ！ぼぼ僕はオールマイトにAくんのこと頼まれてるから、｣
｢そうやって立場利用して彼氏面してんじゃねぇぞ！｣
3人の言い合いが始まった。俺のことで始まったはずの争いなのに俺だけ蚊帳の外になってしまい、ぼけーっと立つことしか出来なくなってしまった。
このまましれっとオールマイトさんの所に戻ってしまおうか。
助けてくれた出久くんには悪いけど、あとでお菓子と一緒にお詫びとお礼をすれば……
｢もう！いい加減にしてよ二人とも！｣
普段大声を出すことの無い出久くんが、突如声を荒げた。
この場を離れようとしていた俺はもちろん、やいのやいのと騒いでいた二人も驚いたのか黙ってしまった。
｢オールマイトに頼まれてるからやるのは当然だよ、でもその成り行きでAくんを自分のものにしようなんて思ってない｣
｢…………｣
｢…………｣
真剣な眼差しで二人を見据える出久くん。その凛とした表情は、少し前の彼からは想像つかないような、力強いものだ。
｢昔は何も出来ない木偶の坊だったけど……もう違うんだ。僕はもっと、オールマイトみたいに……それ以上に強くなる。それから、ちゃんと僕の力でAくんを絶対に迎えに行くって決めてるんだ。｣
｢……ハッ｣
｢上等だ、緑谷｣
その時がきたら、しっかりと決着を付けよう。それまでは、Aくんはみんなのものだ。そう告ぐ出久くんに対し不敵な笑みを浮かべる二人。
彼らの間に友情のようなものが生まれ、それを待っていたかのように怪しく光る色とりどりの大きなパレードが横を通り始めた。
ずっと黙って見ていたが、俺の意見は聞きもしないのな。三人のうち誰かのものになることは、彼らの中でもう決まっているらしい。
オールマイトさんの傍にずっとついていたいという俺の密かな願いは、叶わないのだろうか。まあ、俺も俺なりに抵抗するつもりだけど。
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作者名：成瀬 | 作成日時：2019年11月1日 0時
