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この状況にも関わらず普ｯ通に話しかけてくるのはイケメン吸血鬼の焦凍くん以外の何者でもない。
｢オイテメェ半分野郎……俺が今何してんのか分かってて口聞いてんのか｣
｢どう見てもA困ってただろ｣
｢あぁ？喧嘩売ってんのか上等だゴラ｣
｢思ったことを言ったまでだ｣
周りからそこそこ恐れられている勝己くんに、これだけ馬鹿正直な言葉を吐けるのは焦凍くんだけだろう。鋭児郎くんや電気くんも仲はいいけどここまでド直球な物言いはしない。
｢それよりA、血ぃ吸わせてくれねぇか｣
｢やっぱそう来るか……｣
｢テメェ俺をシカトしてんじゃねぇぞ！｣
殺気ダダ漏れどころかもはや殺気しか出していない勝己くんを完全にスルーし、これまたトンデモ発言しだす焦凍くん。
彼がここへ来たとて、俺の命の危機に変わりはなかった。
｢今日はやけに渇くんだ、お前の血が欲しくて堪らねぇ｣
｢あー、満月だからじゃない……？｣
｢そうだな、だが満月じゃなくてもAの血は毎日飲みたい｣
｢そ、そうか｣
真剣な眼差しでそんなこと言われると心臓が溶けそうになる。生憎俺にイケメンの色気耐性はあまりついていない。しかもコンボまで決められてしまってもう死んでしまいそうだ。既に他界してるけど。
彼と初めて出会った時のことはもう随分と前だからあまり覚えていないけど、2回目に顔を合わせた時は花を渡され、その次会った時には結婚を申し込まれた。あれは流石に衝撃すぎて忘れることなどできない。
いやいや俺ら恋人ですらなくないか？吸血鬼ってそんなかんじなの？と困惑しながら聞くときょとんとした顔で｢知らねぇ｣と返ってきた。知らないのか。
聞けばどうやら彼は色恋沙汰にはめっぽう疎いらしく、誰かを好いたことすらもないようだ。好きを通り越して結婚したいと思ってくれたのはとてもありがたいが、ちゃんと段階を踏んでくれないと困る。
そう伝えれば、綺麗な色違いの双眸を輝かせながら｢わかった｣と答える様はどことなく幼子のようで、少し可愛いと思ってしまった。
その直後に｢好きだ、俺の恋人になってくれ｣と告白され頭を抱えたのはまた別の話。
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作者名：成瀬 | 作成日時：2019年11月1日 0時
