VI ページ6
｢やあ村長、ハッピーハロウィン！今日はとてもいいお祭り日和なのさ！｣
｢これはこれは校長！ハッピーハロウィン、今日も毛艶がお綺麗で｣
｢この毛艶は満月のおかげでもあるがそれだけじゃない、毎日の念入りなお手入れが重要なのさ｣
オールマイトさんの昔からの知り合いがお見えだ。
お互いとても忙しいこの2人は積もる話もあるようで、顔を合わせる度いつも長話が始まる。
今日も今日とて長くなるに違いない。
そう思ったちょうどその時だ、後ろからゾクリと背筋を這うような低い声で名前を呼ばれたのは。
この感覚はもう既に知っている。落ち着いて後ろを振り返ると、暖かそうなコートのポケットに手を突っ込みギラギラした目で静かにこちらを見つめる勝己くんが、少し離れた場所で佇んでいた。
久々の再開に喜ぶのも束の間、この状況は少しばかり厄介だということを思い出した。
今宵は満月、俺たちの妖力は増すが種族によって個人差がある。勝己くんの種族でもある人狼は、最も月の影響を受ける。つまり、今この場で1番妖力が強いのは人狼である勝己くんだ。
そんな勝己くんに睨まれている俺、もはや命の危機に近い。
｢……喰わせろ……｣
｢や、あの、むりです、｣
｢喰わせろ……今夜こそテメェを……！｣
刹那、二人の間にあった距離を一瞬で詰め顎を掴まれる。
動けなかった俺は為す術もなく上を向けさせられ、熱が宿ったギラついた目を見つめる羽目になった。
この時の彼の瞳はどうも苦手だ。見つめられると心臓が勝手に早く動いてしまうし、彼の熱がうつされているのかこちらも熱くなってしまう。
熱い吐息と共に舌なめずりをする勝己くんは色気溢れるイケメン以外の何者でもなく、ただただ心臓に悪い。
｢腹減ってんだよ……死にやしねぇんだから喰わせろや、優しくしてやっからよォ｣
｢お、お腹すいてるんだったらほら、あそこにパンプキンパイが、｣
｢んなモンで俺が満足するとでも思ってんのか？俺はテメェが喰いてぇんだ｣
｢いや、俺は美味しくないと思うよ……｣
｢んなこたぁ俺が喰ってから決めんだよ！いいからさっさと俺｢A、大丈夫か？｣……ﾁｯ｣
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 8人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：成瀬 | 作成日時：2019年11月1日 0時
