IV ページ4
賑やかな街路樹を進んでいくと、少し離れた所に眼鏡をかけた見覚えのある顔が見えた。
向こうもこちらに気づいたようで、手を振ってこちらに走ってきてくれた。
ツギハギの人造人間の割には足がとても速く、ある程度あった距離はものの数秒でなくなってしまった。
｢村長さん、お疲れ様です！ハッピーハロウィン！｣
｢やあ飯田少年、ハッピーハロウィン。｣
｢Aくんも、ハッピーハロウィン！｣
｢ハッピーハロウィン、相変わらず足が早いねぇ｣
オールマイトさんの前でビシッと敬礼しながら挨拶する天哉くん。
いつにも増して動きが多く真面目すぎるその姿が面白くて、つい笑いそうになってしまう。でもその真面目さは彼のいい所の1つだろう。
｢Aくん、これ好きだろう？今日は早くになくなってしまいそうだったから、君の分を取っておいた｣
｢わぁ、嬉しい！ありがとう天哉くん！｣
｢君はそれを毎年幸せそうに食べているだろう？今年もそれが見れないと寂しいからな｣
そんなに顔に出ていたとは思っていなかったので、少し恥ずかしくなってしまった。
でもこのキャンディが大好きなのは確かだ。この祭りで密かに1番楽しみにしているくらいには。
背に腹はかえられない。ありがたくいただくとしよう。
｢おいしい……！ハロウィンはこうでなくちゃね！ほんとにありがとう、天哉くん｣
｢ははっ、それは何よりだ。今年も君のその顔が見られて良かった！｣
面と向かってそう言われると余計に恥ずかしくなってしまうが、美味しいものは美味しい。
この時頭を撫でられ、ついときめいてしまったのは秘密。
……彼は無意識に撫でていたようだけど。
もう一度彼にお礼を行ってから、広場に向かった。
｢そうだ、緑谷くんたちがもう広場に来ているぞ。君が来るのを待っているようだ。｣
｢そうなの？わかった、ありがとう！天哉くんはもう戻っちゃうの？｣
｢俺はちょっと取りに行く物があるんだ。少ししたらすぐ広場に戻るよ！｣
｢そっか、じゃあまたあとで！｣
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作者名：成瀬 | 作成日時：2019年11月1日 0時
