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｢大丈夫かいAくん！｣
｢うるさいですよオールマイトさん、俺は眠いんだ｣
｢こっ、困るよ相澤くん……｣
｢ふぐぅ、く、くるしい｣
寝転がったまま俺を腕の中に収めつつ頭上の猫耳を触っているミイラの消太さんは、言わずもがな僕を引っ張った犯人だ。
普段どんなことをして起こそうとしても命の危険が無い限り死んだように眠っている彼が今起きているのも、今日が満月だからだろう。
片耳は消太さんに撫でくり回され、もう片方は消太さんの髭が当たっていて両方擽ったい。
ついでにしっぽまで撫でられてしまっているから、変な声が出てしまいそうだ。
｢消太さん、擽ったいです｣
｢お前猫の姿に戻れよ｣
｢いやです。妖力が有り余ってるんだ｣
｢もうオールマイトさんのところじゃなくて、俺のところ来て一緒に眠れ｣
｢それはちょっと｣
なんとか抜け出すと消太さんに軽く舌打ちされてしまったが、抜け出すこと自体は容易かった。彼は抜け出させてくれたのだろう。
噂でしか聞いていないが、普段寝てばかりいる彼もオールマイトさんほどではないが相当強いらしい。本気を出せば俺のことなど一瞬で閉じ込めてしまうこともできるかもしれないが、それを決してしないのは俺の意思を尊重してくれているからなのだろう。
彼は悪い魔物ではない。きっと優しい。
｢ありがとう、消太さん｣と声をかけ髪を撫でると、心地よさそうに目を閉じた。
｢満月じゃない日にまた来い｣
｢消太さんいつも寝てるじゃん｣
｢……それでも来い｣
やれやれと困ったように笑うオールマイトさんと共に消太さんと別れ、そのまま広場へと足を進めた。
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作者名：成瀬 | 作成日時：2019年11月1日 0時
