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あれからの焦凍は更に素直になった。
具体的に言うと、我慢をしなくなった。
誰もいなくなった更衣室でキスしたり、人前でのスキンシップが激しくなったりエトセトラエトセトラ。
俺はというと、あの夜からもうすっかり焦凍にメロメロ。
｢好きになればいい｣って言われた時点で即落ちだった。
けれども、人前でイチャつくようなことはしない。
これは俺達だけの秘密だから。
……とはいえ正直焦凍の過剰なスキンシップのせいで勘のいい人にはちょっとバレそうだけど。
俺がスキンシップを止めさせればいいだけの話なんだけど……どうしても、可愛くて。
｢A、髪乾かしてくれ｣
｢はいはい、ドライヤー貸して｣
｢え？お前何で普ｯ通に轟兄の足の間座るわけ？そして轟兄も何で普ｯ通に乾かし始めるわけ？？もしかして俺がズレてんの？？｣
｢まあ…昔から毎日やってるし。ね？｣
｢……Aのドライヤーは俺のだ｣
｢いや別にやってもらおうとか思ってねーから睨むなし｣
普段はこんなに可愛いのに、夜になると急に狼になるんだから、そんなんやられるに決まってるよね。
やられた相手が他の誰でもない俺で良かった。
ドライヤーをかけられながらうとうとしだす焦凍を、心の底から愛おしく思った。
｢焦凍〜？寝ないでよね｣
｢んん……ねみぃ｣
｢もうすぐ終わるから、はやく歯磨いて部屋戻ろうな｣
｢Aの部屋がいい｣
｢えー？俺久々に畳の上がいいなって思ったんだけどな｣
｢……声出さねぇなら｣
｢ばっ……か！｣
ドライヤーの音に消されかけた焦凍の言葉をしっかり聞き取った俺の顔をチラリと見て、ほくそ笑む。
悪戯っぽく微笑んだままわざと俺によしかかり、左手で軽く俺の顔をするりと、耳元で｢顔真っ赤だぞ｣なんて言われたからもう俺は気を失ってしまいそうだ。
かっこいい……という言葉と共に固まってしまった俺の手からドライヤーを抜き取り手早くしまう焦凍。行くぞ、Aと俺の手を引っ張り部屋へ連れていく姿を、クラスメイトはとうとう気にも留めなかったらしい。
まあ、正直ありがたいけど。
この調子でいけば、2人の世界に入っても焦凍のスキンシップが更に過剰になっても、"双子の行き過ぎた戯れ"で片付けられる。
この認知がそのまま続いて、日常と化して。みんなの''普通''になって、当たり前になって。
このまま誰にも気づかれずに、いつまでもずっと、2人きりでいられることを夢見る。
それは、焦凍も同じだろ？
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作者名：成瀬 | 作成日時：2019年10月16日 0時
