スポットライト【影山飛雄】 (ページ5)

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ライト5 ページ5

教室の中には誰も居ない。

返却期限がもうすぐの本を読みきろうと思い、ページをめくっていく。

昔から読書は大好きだった。

時間を忘れて世界に没頭できる本が大好きだった。

でも大好きな読書にさえ、集中できなくなっている。

影山くんのことばかり考えている。

頭より心で考えてる、感じてる。

好きだと叫んでいるの。

その爆発してしまいそうな気持ちを無理やり塞ぎこんで相手に向き合わなければいけないのだから恋は過酷だ。

それでも過酷ささえも追い越してしまうものがあるから、きっと恋するのは楽しくてもどかしいんだ。

すき。

たった２文字に今までの気持ちが乗ってしまう。

だから簡単には言えない言葉。

「……ふぅ」

ぱたん。

本を閉じて伸びをする。

同じ姿勢でずっと居るのって結構キツイから、たまにこうやって切り替えるの。

今日は本の内容が入ってこないなぁ。

当たり前か。

そんなことを思っていたら廊下から足音が聞こえてきた。

ガラッ、と扉が開いた音がした方に視線を向ける。

「まだ残ってたのか？もう鍵閉めるぞー」

見回りの先生か、と少しがっかりする。

ゆっくり席を立つ。

影山くんのこと、どこで待ってようかな。

「っ、すみません！部活長引いて……」

見回りの先生の横をすり抜けて影山くんがこっちに来る。

「……っあ、ごめん。じゃあ、行こう、か」

ぎこちなく発した言葉に影山くんは元気にはい！、と返事をしてくれた。