足りない ページ9
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『親友じゃ、足りないって、?』
「うん。だから、」
「ふふふ、何をしてらっしゃるんですか?」
無一郎くんが私の問いに答えようとしたとき、そう声がかかった。見上げるとそこにいたのはしのぶさんで。
どす黒い雰囲気を漂わせており、見るからに怒っているのが分かる。
驚きすぎて反射的に無一郎くんに繋がれていた手を強く握ると、彼女は目をスッと細め、口を開いた。
「怪我人を襲うのは感心しませんね、時透くん」
「…怪我人だから、が感心しない理由じゃないですよね?」
…心なしか2人の間にバチバチと火花が散っているような気がする。どう声をかけようか迷っていたところ、窓からコンコンと音がして、目を向けると無一郎くんの鴉がいた。
「時間!時間!任務ノ時間ヨ!!」
「ああ…忘れてた。」
するり。彼は繋いでいた手を離して立ち上がった。触れられていた傷跡が少し熱くなったような気がしたのを無視して、私も起き上がる。
そろそろ行くねと言い、無一郎くんが私の髪を一房掬って口付けをした。
「じゃあ、またね」
そう言って、彼は部屋を後にした。
ぱたんと扉が閉じられたあとも暫くぽかんとしていたら、しのぶさんにAさん?と呼びかけられる。
『………今の若い子って怖いね』
体を渦巻く熱を逃すように、息を吐いた。
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作者名:なる | 作成日時:2023年5月19日 18時