揶揄わないで ページ18
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部屋に差し込む日の光と、話し声に目を覚ます。
声のする方に目を向けると義勇たちが店の人と話しているようで、まだ意識が覚醒しきっていないまま耳を澄ました。
「これで足りるか」
「いやいやぁ、多いくらいだよ旦那!どうもありがとうございます!」
迷惑をかけたな、そう言って錆兎が襖を閉じたのを確認してもぞもぞと起き上がると、2人が気づいてこちらに寄ってきた。
おはよ、と掠れ気味の声でうとうとしながらも言うと、朝が弱いの変わってないんだなと錆兎に頭を撫でられる。
『さっきのって…?』
「ああ、泊まった分の金を払ってたんだ」
『あー……、えっ!?』
返ってきた答えに驚き、寝ぼけていた頭がばちっと覚めて目を見開くと、おはようと笑いながら言われる。
その顔は昨日男を殴り飛ばした人とは思えないほど可愛い笑顔で、朝から眩しい。そんなこと絶対言えないけど。いや、問題はそこじゃない。
『お金、お金って、だって遊女の一晩分って約束でお部屋貸してもらったんだよ?それに3人分って金額やばいんじゃ…?』
私が寝ている間に2人が全部払ってくれたと言うのだ。…相当な金額じゃないのだろうか。
「勝手に入ってきたのは俺たちだ。気にするな」
そう答えた義勇が私の乱れている服を直してくれる。
その動作に昨日のことをふと思い出し、かちりと体が一瞬固まったのがバレバレだったようで、義勇は揶揄うようにふっ、と笑って目を細めた。
「昨日体で返してもらったつもりだったが、…まだくれるのか?」
『ぅ、……ちょっと、揶揄わないでよ』
「可愛い」
『お願い錆兎助けて』
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作者名:なる | 作成日時:2023年5月19日 18時