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誤算 ページ15





『え、開いてない?』


「あそこの薬屋さんでしょう?今日は確かお休みだったと思いますよ」


『まじか〜〜』



なんと薬屋は今日お休みだった。わざわざこんなに遠くまで来たのに…不運すぎてへこむ。大量の薬草を抱えて帰る覚悟もして薬草を入れる箱を持ってきたと言うのに。

如何したものか考えていると、情報をくれた遊女がこちらを見上げて口を開いた。



「ねぇ、素敵な殿方さん。きっと明日にはお店開くと思うし、今日はうちに泊まって行かない?」



御相手、しておくんなまし。そう言って彼女はするりと私の胸元を着物越しに撫でた。
紅が塗られた唇から紡がれた言葉は甘く、暗くなる空と共にもう少しで遊郭が本格的に動き始めることを示唆していた。



『…そうだなあ。じゃあ、一夜だけ買っても?』



「あら、受けてくださるなんて。ふふ、沢山もてなしますね」



それからは、あれよあれよと店に連れて行かれ、酒を沢山飲まされた。久しぶりに飲んだ酒に体が熱くなるのを感じ、遊女にもそろそろ部屋に向かおうと言われる。


部屋に続く廊下を歩いていると、時折そういったことをしている甘い声が聞こえてきて、ここがそういう場所だったのだと再度思い出された。

自分の部屋まで来た頃、ねえ、と隣から話しかけられる。
彼女は夕べのように此方を見上げ、私に囁いた。



「あなた、女性でしょう?」


『えっ、バレてました!?』


「ふふ、胸元を触ったときにね。ここらに女性一人では危ないから男装してらっしゃったんでしょう?…私、それなりの位ですから、自室があるんです。朝方迎えにきますから、どうかゆっくりなさって。」


『それは…ご親切にありがとうございます。このお礼は、っ』




気づいたら抱きしめられていた。甘い香の匂いが鼻をくすぐる。




「…これで充分。じゃあ、おやすみなさい」




部屋の襖がぱたりと音を立てて閉じられた。

それもまた誤算→←ガキじゃない



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作者名:なる | 作成日時:2023年5月19日 18時

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