兄弟の進む道 (ページ34)

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命ページ34

俺たちは、張りつめた空気の中にただ、たたずんでいた。一人の声がそれをおわらせる。

「そういってまた俺たちを裏切るんだろう！」

綺麗な長い黒髪を持った男が叫んだ。所々から兼定、和泉守と呼ぶ声が聞こえる。

「裏切らない。」

「そういって、俺たちは何度も裏切られた」

彼は水色の瞳に涙を浮かべた。

「俺の、俺の国広を返せよ！」

返せってことは死んだのか。必死で訴えてくる彼に同情した気持ちが冷めていくのを感じる。

命が戻ってくるなら俺はとっくに取り返してる。俺だって、悠だって会いたいのに。

泣きわめきたくなる気持ちを歯を食いしばり耐えた。隣りから嗚咽が聞こえる。なだめるように悠の頭を撫でた。

「お、兄ちゃ.....」

「俺が欲しいのは悠の安全だけ。裏切る必要なんてない。失われた命はもう帰ってこない。そんなの分かってることでしょ？」

優しく笑いかけてくるお母さん。温かい手で抱きしめてくれたお父さん。
あの人達は帰ってこない。

「自分達だけ辛いみたいなの、なんか腹立つ」

何百年も生きている彼らよりも物心つかないうちに親から切り離された悠の方がきっと何千倍も辛いだろう。

ふと我に返り顔を上げると刀剣男子達が俺たちをじっと見ていた。

「ぁ...」

「A？」

一期さんの声が聞こえる。

「一期さん...悠をよろしく。」

「えっ!?」
驚く一期さんに悠を押し付けて走り出した。
足に引っかかる着物をたくし上げる。