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芥川くんは、その日から来たり来なかったり。ここに訪れる時は必ず中也さんが一緒に居た。きっと拒んでいるのを無理やりにでも連れてきているんだろう。
中也さんも、理由は聞かないけれどなんとなく私たちの空気を感じ取っているらしい。
「……」
重い。空気。
「……ぁ、」
何か口に出そうとしても、言葉が喉に突っかかったように出てこない。代わりに咳をして誤魔化した。
そんな私たちを見かねて、中也さんは最終手段に出た。
「A〜?あーもう、相変わらずそんなだっさい格好。誰かさんの趣味が移ったんじゃないのー?」
「あぁ!?なんだって!?」
「はいはい、落ち着いて。それと!これは仕事用に用意された服ですよ。私だって好きでこんなダサい服着てるわけじゃないんです!」
「ダサイっていいやがったな手前!!」
ぎゃーぎゃーわーわー。一気に辺りが騒がしくなった。
芥川くんは端っこの椅子に座って私たちの一連の会話を聞いている。酔うとあんなに太宰さん太宰さん言ってるのに、本人を前にするとそうでもないみたいだ。
「あれ、君いたの」
太宰さんが芥川くんを見る。バッチリと視線が交わると、芥川くんの目の色が変わった。
認めて欲しい認めて欲しい認めて欲しい認めて欲しい……太宰さん太宰さん太宰さん太宰さん。
今にも飛びかかりそうな勢いでそんなことを言いたげに太宰さんを見つめている。
「お二人共、どうぞお座りください」
またくだらない小喧嘩をしだした双黒を制圧するように窘める。
二人は渋々といった様子でご丁寧に離れた席に腰を下ろした。
「こ、こ、に、座りなさい」
少し強めに言うと二人の肩がビクリと跳ねる。関係ない芥川くんもちょっと怖がってるみたい。……失礼な。そんなに怖くないでしょう。
「芥川くん、申し訳ないんだけどここに座ってくれる?」
私は二人の間の席を指差した。隣同士だとまた喧嘩をしだすから、仲介役になってもらおう。
私の提案に芥川くんはこくりと頷いてくれた。本当、芥川くんは素直で可愛い。
「みなさん、何を飲みますか?」
「紅茶」
「洗剤」
「では茶を」
はーい、と返事を返してそれぞれの飲み物をカップに入れていく。
「はい。どうぞ」
ことん、とテーブルに置く。お昼ご飯は何を作ろうか。
「オムライス。作ってきちゃいますね」
「おう」
「はい」
「これ、不味いんだけど」
「洗剤ですから、当たり前でしょう」
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さくら餅(プロフ) - 紅玉さん» 最後まで読んでいただき、ありがとうございました!無事完結させることができて心底ほっとしております。私は貴方様のコメントにギュンギュンしました!笑本当にありがとうございました!! (2021年2月7日 15時) (レス) id: 0223a8e0a3 (このIDを非表示/違反報告)
紅玉 - 完結おめでとうございます!!!!尊いのと可愛いので私はギュンギュンしまくってました!!!!(ギュンギュンとはキュンキュンの進化系です!!!!) (2021年2月7日 12時) (レス) id: 835185f078 (このIDを非表示/違反報告)
(=^・^=) - 人虎に会いたい…。 by芥川 (2020年12月1日 15時) (レス) id: b3d6820988 (このIDを非表示/違反報告)
(=^・^=) - 厳しいわ。 (2020年12月1日 14時) (レス) id: b3d6820988 (このIDを非表示/違反報告)
さくら餅(プロフ) - ☆天香☆さん» ありがとうございます!!すっごく嬉しいです!文ストはキャラクターひとりひとりが個性的で大好きなので、つい絡ませちゃいます笑コメントありがとうございました!! (2020年3月12日 21時) (レス) id: 0223a8e0a3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さくら餅 | 作成日時:2019年10月4日 16時