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「……只今、戻りました」
「手前ら……伝染るから、来んじゃねぇ……よ」
掠れ気味の声と熱い吐息。大きな蒼の瞳は潤んで今にも雫がこぼれ落ちそう。いつもの強気な彼と違う表情に、思わず目を逸らす。
キッチンの流しを見ると、食器も何も置かれていなくて、朝から何も口にしていないのが分かる。この様子じゃ、一人では動けないのは一目瞭然だけれど。
「なーに言ってるんですか。幹部様が体調管理を怠った罰ですね。今日は私たち、ボスから泊まり込みの許可出てますから」
「まじかよ……そりゃ」
「まじです。なので今日は存分に休んでください。ごめん芥川くん。濡れタオルと薬、用意出来る?」
「はい」
「夕飯、お粥なら食べられますか?」
「あぁ……悪い」
綺麗に並べられた調理道具を選んで、食材をまな板に乗せる。普段から料理はするのか、きちんとした調理器具と食器が揃っている。
それにしてもこのキッチン広いなぁ。さっすが、タワーマンション。
「何か、手伝うことは」
「あ、ありがとう。じゃあ……」
「あー、料理の手伝いはやめた方がいいぞ。何でもかんでも羅生門で木っ端微塵になる」
中也さんの言葉に不服そうな芥川くん。
「そこまで酷くはありません」
悔しそうに中也さんを睨みながら言い返す姿に、普段よりも少しだけ幼さが垣間見えた。
くす、と私が微かに笑ったのを彼は気付いて貴女もですか、とまた反論し出す。
「やめてー笑わせないで……っ、手元狂っちゃう」
「芥川、水。水くれ」
「……承知しました」
それから芥川くんと色々協力しつつ、無事にお粥が出来上がった。
美味しそうな匂いと共に、湯気が上がっていく。三人分のお皿に移してリビングのテーブルに乗せた。
「起き上がれますか」
「あぁ。だいぶマシになった」
「良かった。顔色もさっきより全然良くなりましたね」
私と芥川くんは安堵の息を漏らす。三人がひとつのテーブルに揃った。
何となく顔を見合わせてから、みんなで手を合わせる。
「いただきます!」
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さくら餅(プロフ) - 紅玉さん» 最後まで読んでいただき、ありがとうございました!無事完結させることができて心底ほっとしております。私は貴方様のコメントにギュンギュンしました!笑本当にありがとうございました!! (2021年2月7日 15時) (レス) id: 0223a8e0a3 (このIDを非表示/違反報告)
紅玉 - 完結おめでとうございます!!!!尊いのと可愛いので私はギュンギュンしまくってました!!!!(ギュンギュンとはキュンキュンの進化系です!!!!) (2021年2月7日 12時) (レス) id: 835185f078 (このIDを非表示/違反報告)
(=^・^=) - 人虎に会いたい…。 by芥川 (2020年12月1日 15時) (レス) id: b3d6820988 (このIDを非表示/違反報告)
(=^・^=) - 厳しいわ。 (2020年12月1日 14時) (レス) id: b3d6820988 (このIDを非表示/違反報告)
さくら餅(プロフ) - ☆天香☆さん» ありがとうございます!!すっごく嬉しいです!文ストはキャラクターひとりひとりが個性的で大好きなので、つい絡ませちゃいます笑コメントありがとうございました!! (2020年3月12日 21時) (レス) id: 0223a8e0a3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さくら餅 | 作成日時:2019年10月4日 16時